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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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冰(こおり)のエアポート

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「僕ね、半年前はアリゾナに居たんですよ。そこは50度近い灼熱地獄だったのに」
「そこと気温差が60度以上なんて、すごい」
「その時、ホテルの前に巨大ショッピングモールがあって、大きな駐車場を挟んで100mくらいだったかな。そこに歩いて行こうとホテル前の横断歩道で信号待ちしているだけで、直射日光に我慢できなくなって引き返したんだ」
「今はその暑さを考えられないです」
「ここではバスを待ってたった5分だけど、もう帰りたい」
「私も」
「鈴木さんは、よく海外に行くんですか?」
「めったに行きません。英語も喋れないので」
「ビジネスクラスだったから旅慣れているのかと」
「ええ、帰りの飛行機代は奮発したんです。ちょっといい気分の旅ができると思っていたのに」
「へえ。特別な旅だったんですね」
「いいえ。彼に合いに来ただけです。でも、寒くてどこにも行けなくて、ずっとマンションに居たんで、私何しに来たのかなって。それで帰りだけでも贅沢したくて、彼にチケットを変更してもらったの」
「結婚されてなかったんですね」
「はい。独身です」
「どうりできれいな方だと思いましたよ」
このようなお世辞はよく言われるので、寿美代は切り返し方を心得ていた。
「いえいえ。木田さんはご結婚は?」
「ええ。娘も一人います」
「でも、それだけ海外に行かれてたら、寂しいんじゃないですか?」
「そうですね。でもskypeで会えるし、LINEで電話もできるし、会話はほとんど毎日してますよ」
「へえ。すごいですね。なんだか羨ましい」
これは寿美代お得意の、お世辞のお返しである。
「羨ましいだなんて、毎日会えるほうがずっといいですよ」
「ええ。まあそうですね」
寿美代は、思ったより良好な家族関係なんだと理解した。
「ヘックション! ずずぅー。ああ、ハナが出てきました」