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無月夜(5/15編集)

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「……何? 別に何も起こってないじゃないかって? まぁここまではね。……紺青、蘇芳。ここからは君らには初めて話す」

 ……実はあの時、トパーズは屋上に行かなかった。

「ちょっと静かにしてくれない? 別に怖がらせたくてテキトーなこと言ってるわけじゃないよ。文句は最後まで聞いた後にしてくれる?」

 建物に入っていったトパーズは、冷え冷えとした空気にゾッとした。外と全然違うのだ。中は……温度だけじゃない、うまく言えないけどとにかく嫌な感じだった。上に行こうとして、階段の前まで行ってみたが、上にもっと得体のしれないものがいたらと思うと足が動かない。……どのぐらいそこにいたか分からないが、いつまでもここにいるわけにもいかず、戻ろうとトパーズは踵を返した。
 どれだけからかわれたって、上に行くよりは絶対にマシだと思ったのだ。なのに。出てきたトパーズを見た彼らの反応は……。

「もう一度言う、僕は屋上には行ってない。けど君らは僕を見たっていう。その場でこのことを言わなかったのは、それ言ったら……それこそ空気が凍っただろうし。きっと君らの見間違いなんだと、僕はずっと自分に言い聞かせてきたんだ」
「……え、絶対に僕だった? ブロンドの髪、水色のシャツ? 顔まではっきり見えたから間違いないって? ……やっぱそうか。あのさ、あの時は全員かなり酔ってたから深く考えてなかったんだと思う。僕、あれからずっと考えていたんだ」

 ……月のない真っ暗な夜に、屋上にも地上にも灯りがない中、果たして屋上から手を振ったところで、見えるのだろうか。どうして、友人達が見た『黒鳶トパーズ』は、顔まではっきり見えたのか。

「僕が嘘を言っていると思うかもしれないね、でもこれだけは説明しきれないでしょ? とにかく僕は、あの時、上まで行かなくて本当によかったと思っているよ」
作品名:無月夜(5/15編集) 作家名:狂言巡