愚者
普段温厚なだけに、誰しもとまどってしまう変貌ぶりである。
「ごめんなさい・・・・」
泰蔵は我に返り、自分の犯した失態に恥ずかしさを覚えた。
「泰蔵君。今企画を聞くと即却下してしまいそうだから、あえて聞かないわ。後の打ち合わせにも参加しない。頑張っていいイベントやってね。」
静香は不適な笑みを浮かべながら帰っていった。
「・・・刀使いたいんだね・・」
「理香ぁ縁起でもないこというなよ!」
泰蔵は自分も同じことを思っていたため余計に恐怖感を覚えた。
「企画の成功よりも、試し斬りを優先させたな・・・」
「太一・・・・・お前もそう思うか・・そうだよな・・どうしよう」
「泰蔵〜言い出したのはお前だろ?それに自信があったからあんなこといったんだろ?取りあえずどんな企画なんだよ。俺も協力するからな」
「神田副部長〜やっぱりあなたは法王だよ〜うるうるうる」
「取りあえず俺も企画聞くよ。どんな企画?」
太一は泰蔵のことを心配していないが、この流れでどんな企画を提案するのか多少興味があった。
「あのさ・・・方向音痴の人っているでしょ?道に迷う人だよ。なんつうか某漫画にいるだよ。黒豚になる人。あんな感じの人をいうんだけどさ〜」
「黒豚おいしそう・・」
「理香ちゃぁ〜ん。食い意地はったらだめだぞw」
神田は静香に突っ込むように理香にも突っ込む
「気持ち悪い」
「・・・・・・・」
「やっぱり黒豚は胃にもたれますよね。想像しただけで気分が悪くなりました。」
「俺のことを言ったんじゃないんだね・・・天然だな」
「話続けていい?」
「理香の天然ぷりが発揮されたところでどうぞ」
「方向音痴って凄い人はかなり凄いんですよ。みんなクローズアップしないけど、この方向音痴の人を集めて、コンテストをしたらどうですかね?部長や副部長が審査員をしたら更に話題性が高まりますよ。」
泰蔵の企画にみんな薄い反応を示す。と同時に泰蔵を哀れむ目で見つめる。
「なんだよ!面白くない?」
「あのさ、その一流の方向音痴の人たちはどうやって見つけるの?」
神田は至極当然の疑問をぶつける。
「それなら大丈夫です。ネットで公募をかけました。何人か申し込みがありました。コンプレックスだったことを武器にできるって喜んでいましたよ」
「交通費は?遠かったら金かかるぞ」
「それも大丈夫です。市内です。交通費については既に交渉済みです。」
「へー泰蔵にしては準備万端だな」
「太一ぃ人聞き悪いこというなよ〜」
「ほう。これだったら面白いかも。乗った」
珍しく神田は泰蔵の企画に同意することになる。
「じゃあ準備始めましょう。次のイベントは来週です。」
理香の音頭と共に、新しいイベント「方向音痴コンテスト」が始動した。