破魔マガジン
ガルルルと唸るキメラは傷を癒してる猫のような声をする、晶は既に位置についてる、すこし離れた方向に兜がちょっとだけ見える、多分晶の式だ、落ち武者鎧でしょう。
撃つか?準備万全そうだし。何よりキメラの状態は変だ、迷わない方がいいかもしれない。
よし、仲間を信じて撃ちましょう。
私は深呼吸して、トリガーを引く。
一分間1000発くらい撃てる発射速度だ、三発つづショットバーストで撃っても32発だけのマガジン、きっと長くもたない。
9mm弾のダダダの音とケースが地面に落ち、ティンっとする音とキメラの苦痛の咆哮が混ぜて、鼓膜に衝撃を与える。瞬間移動の術があってもリロードは自分でやらなきゃならない、時間かかるので弾をほどんどキメラの翼と足に撃ち込んだ、キメラを無力化するのは狙いだ。
晶は式を駆使し、急に数倍大きくなった鎧はキメラの左翼を引っこ抜き、重傷させる。失血過多前に晶は火を吹き出し、焼いて止血した。
予想通り、すぐに弾切れ。
「リロードする!」
私は叫びながら空になったマガジンを投げる、投げられたマガジンが消えた同時に空気から新しいマガジン取り出す。
鎧は全身の重みにもってキメラを抑える、カランはチャンスを捉えキメラの首に落下キックをくらわせる、これはもらった。
いつもそう、準備する時間が多くかかると、本番はあっという間に終わる。
「よし、これで確保っと。」
私は習慣で新しいマガジンを装填し、ボルトを引く。
ウィィィィーー!
車の警報が鳴る…っと思ったら、それはキメラの鳴き声だ。その声は脳まで届き、黒板に金属が掻いてるみたいな音が頭骨内で響く。
私はすぐキメラに銃口を向け、手が震えながらトリガーを引こうとする。
「くっ!なんだこの声は!」
「ふざけんなよ、そこまでのダメージくらったのにまだ起きてるのか?」
晶も驚いてるらしい。
一方カランは何も言わずに回転キックでキメラを黙らせようとした。
ウィィィィィィーー!!!
むなしくも失敗。
正直、まだ奇声あげ続けてるキメラを撃ってない理由は二つある。一つは私の判断で所詮声だけ、脅威と認めるには程遠い。もう一つは一番大切な理由だ、こいつがくたばったら報酬が減る。
とは言えやっぱこいつを黙らせたい、そろそろ我慢の限界で撃てそう。
「ねぇ、撃っていい?本気じゃないけどなんとなく。」
MAC-10を収納し、ショットガンを構え、私はキメラにもう一度銃口を向かう。
「本気じゃないならやめんか!」
すぐツッコミに入る晶、でもさすが彼も限界近いでしょう、かなりムカついてる。
ビリッ。
「ん?」
ちょっとした電流を感じる。
「ちょっと晶、なんかでん――」
ピカッ!
浮かれた自信を砕き、キメラは強烈に光る、そして凄まじい電流を放ち、私たちを弾け飛ばした。
壊れた無線の悲鳴で耳はキンキンと響く。
こりゃ聞いたことも見たことないわ。
キメラは組立人形みたいなもの、電流を操ることは不可能なはず。車とキメラの巨体に挟まれ、とてもよろしいことじゃない。サンドイッチのハムみたいになったが、諦める気はない、私は動こうとする。
キメラの吐息が顔に当たる、冷静を失ってる私にとってまさに最悪の煽ぎ。
私はトリガーを引いた、何回も引いた。二発バードショットと32発拳銃弾しかないのに、実際十秒もなく弾切れなのに。銃がガチャガチャと響いでも、私はやめなかった。
一体何が起こっているのだろうか、もう分からない。こんな目に会う前、私は命を惜しくない人の自覚がある。しかし今、思考が止め、動きが本能のままに任せた結果。
ただただ死にたくない。
私は自分が生きていた事を気づいた頃、キメラは既に死んでいた、顔面の形は完全に崩してる、ショットガンの仕業でしょう。
「うっ…」
痛みで呻く。
「晶!カラン!」この時にきて、仲間を思い出す、「晶!おーい!」
「吠えんな。」
すこしだけ離れたところから彼の声が届く。
いつものように生意気で良かった。
立ち上がり、彼は傷んた式を探す。電撃で紙切れになったか、鎧は見えない。
乱れた足音と一緒に、カランは疲れに染み付いた体を引きずって現れた。
「危ういところでした…」クラっとする彼女は車に傾け、荒々しく呼吸を取る、「とてつもないバケモノですね。」
晶は戻って、キメラの死体を見ながらため息をつく。
「はぁー」
「どうする?」
「アルケミストどもに責任を取らせるしかないだろう。」
「追加料金はもちろん、電撃できるキメラだよ?随分と強烈だし、見過ごすわけにはいかないでしょう?」
「データ欲しいって言うのかお前?」
「またあったらどーすんの?もちろんデータ欲しい、あんた欲しくないの?」
「俺の体力でもう式が使えん、カランはあの状態だ、回収できないだろう。欲しいだけってなんもならん。」
私はカランに目線を注ぐ、彼女はまだふらふらだ、確かに回収は無理でしょう。
「じゃ、追加料金でデータを引き換え…」
「却下。」
「だよねー。」
落ち込む私を見て、カランの瞳はくるっと回し、なんやらのアイデアを思いついたな?
「晶さま、ここの施設を借りませんか?」
「えっ?ダメでしょう!ここ電子ロックだよ?」
これは聞き逃さない、カランは何する気だ?私は視線で晶の同意を求む。
晶は好きの子をイタズラつもりの小学生みたいの笑みで返す。
やる気だ、この人やる気まんまんだ!