道化師 Part 2
一海が飲み物の追加を言いにカウンターに来た。
「一海君だけ残してこっちに来てごめんね」
「ううん、大丈夫。加納さんこそヒロさんと仲良しなんでびっくりしちゃって、さっきはごめんなさい」
二人して赤い顔で照れ笑いをしながら
「一海君、名前でいいよ」
「はい、ミユキさん」
「ありがとう。仲良くしてくれるかな?」
少し不安そうに聞くミユキに、もちろんこちらこそと嬉しそうに一海は答えていた。
「ヒロ、皆んなの飲み物頼む」
木島がカクテルを作り終え、オーダーを伝えてると
「ヒロさん、僕と龍也で持っていきますから、ミユキさんとゆっくりしてください」
二人は、テーブル席にカクテルと共に戻って行った。
「ヒロ、僕こんなに幸せでいいのだろうか?一海君はこんな僕に友達にって……」
ポロポロと溢れる涙、幸せ過ぎて怖いと泣く。
胸に抱き締め何度もお前は何も悪くないのだから、幸せになっていいのだと、幸せにならないといけないのだと囁いた。
「ヒロ、控え室で二人ゆっくりしてこい」
木島がミユキが落ち着くようにそっと二人にしてくれる。
控え室のソファで胸に抱き締めていた。泣くだけ泣けばいいと思う。
「ヒロ、ヒロ、……」
俺の名前を呼びしがみつく姿が愛おしく、守りたいと思う。
誰でも良いわけじゃない、この温もりだから側にあってほしいのだと思う。
泣き疲れて眠ってしまった体をそのまま抱き上げソファに横になった。
「ヒロ、大丈夫か?」
木島が様子を見に顔を出し
「寝てしまったか。車出すから待ってろ」
そっとソファにおろし、起き上がる。
「亮さん、ありがとう。ホントに感謝してる」
「気にするな、俺がしたい事をしただけだ」
木島が出て行った後、龍成さんとサクヤさんが
「ヒロ、俺たち先に帰るな。」
「ヒロ君が側にいてあげるだけで、あの子はは安心するみたいだね。今は、まだ不安定だろうから注意してあげて」
「ありがとうございます。感謝してます」
「俺たちが困った時は手を貸してくれ。タモツ達は明日遠出だって先に帰ったが、茂が道場で待ってるから連絡するとさ。あいつの相手は大変だぞ」
ミユキの兄貴の事はまた連絡すると二人は龍也と一海を連れ帰って行った。
静かになった部屋にミユキの啜り泣きが聞こえる。
「起こしてしまったか?亮さんが車で送ってくれるから、もうちょっと横になってろ。初めての場所で疲れただろ」
「ヒロ、僕は何もない。どうすればあの人達に、どうすれば……」
また、涙が溢れてくる瞳にキスをする。
「お前が心から笑顔を見せてくれるのが一番なんだよ。俺は、お前が可愛いと思うし、愛おしく思う。守ってやりたいとも思うし、守ってほしいとも思う。お前の事が気になって離したくない、側にいてほしい。俺の中でお前への気持ちがどんどん増えていく。駄目か?束縛しようとは思わない、お前は自分の思う道を行けばいい。それが、二人で進んで行ければいい」
「ヒロ、嬉しい。大好きだから、僕の側にいてほしい。ヒロの隣りを歩けたら僕はどんなに幸せだろうと思う」
「俺もミユキが好きだ。一緒に歩いていこう」
触れるだけのキスを何度も繰り返し、涙の残る瞼にも、頬にも。
「ヒロ、帰るぞ。ミユキ、少しは楽になったか?無理して急ぐ必要はないからな。ゆっくりと慣れていけばいい、さぁ、店閉めるぞ」
少しふらついた体をを支え、帰路についた。
作品名:道化師 Part 2 作家名:友紀