欠陥商品
ep3
家の裏には熊が行き交う深い山。
家の窓からは真っ青な津軽海峡を望む私の家。
お風呂は薪で沸かす。
お湯はとても柔らかく、真冬でも入浴後3時間ほどはうっすらと汗が滲むほどに体の芯から温めてくれる。
田舎の家は茶の間が広い。
12畳ほどの茶の間の真ん中には薪ストーブが鎮座する。
薪ストーブと連結した大きな寸胴鍋のような釜のなかにはいつもお湯が沸いていて、食器洗いにもお洗濯にも重宝される。
薪ストーブの上にはいつも大きな大きな鍋が置かれ、そのなかではお正月のお煮しめが炊かれていたり、食卓に上がるおかずが煮られていることも多く、何も作られていないときはただお湯が沸かされ、台所の洗いものなどに重宝する仕組みになっている。
お鍋が網に変れば、そこで食パンを焼き、お餅を焼き、時々は父の酒の肴のするめもあぶられる。
私はこの薪で沸かすお風呂と薪ストーブが大好きだった。
父と母の間を通る風が冷え切っていても、その風が私のほうまで来て私を冷やそうとしても、薪で沸かしたお風呂に入れば、その優しさで温めてくれたし、薪ストーブは冷えた体も心も芯から温めてくれた。