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ピンポン

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ああ、マッチポイントまできてしまった。練習試合ということで1ゲームのみで終わるのが残念だ。でも、ここはチャンスがくれば思い切り打ち返してみよう。

何だか、長いような短かかったような変な気分だわ。あと1ポイントで負けてしまう。でも、もっと試合をしていたい。是非取らなければ。あ、絶好球を打ち返してしまった。

よしっ、チャンスボールだ それっ!

あ! 

あっ、しまった!

ふーっ、僅かに台から外れたて、よかったわ。

これでまだ試合が続けられるな、彼女の真剣な顔はいいなぁ、あ、視線が合った。

視線が合った。好意的に見ている視線だということは分かる。あ、どうしよう。

まだサーブをしないで、視線はこちらを見たままだ。

いけない! 試合を続けなければ。えいっ!

不意を突かれてしまった。慌てて出したラケットのから打ち出された球はネットに当たってしまった。サーブ権が移ったが、変わったサーブは出来ないが、確実に、それっ!

相変わらず彼のサーブは素直すぎる。突発的にわたしは強打してみようと思いついた。

パシッ!


「はい 石川の勝ち。えーと次は……」

あまりの淡々と告げる顧問の声に自分達の試合が貶されたような気分にもなって、石川は訴えるような眼で彼を見た。彼も同じように思っている、やはりこちらを見ている彼を見てそう思った。

鈴木は自分が負けたことより、この短い間に心の交流と思えるような気分になったことの幸せを感じていた、どうしても彼女の視線を外せない。でも、周りが不自然に思うだろうから礼をして下がろう。

どうしても握手がしたかった。石川はさりげなく鈴木の方に少し歩き手を差し出した。

ああ、なんて自然に握手が出来たのだろう。鈴木はもう何年も前からの幼なじみのようかな、いや違うな、もしかしたら神様が引き合わせてくれたのではないかとしか思えなかった。

まだ握手した手に感触が残っている。石川はその手を顔に近づけてみた。手相が変わった?
そんなことある筈無いでしょっ、と自分でも可笑しくなって顔がほころぶのを感じた。

作品名:ピンポン 作家名:伊達梁川