ゆきうさぎのおくりもの
その頃さっちゃんは夢の中にいました。
さっちゃんがケーキのろうそくを「ふぅ…」っと吹き消して
おとうさんとおかあさんがやさしく笑っています。。
寝ているさっちゃんの顔がかすかに微笑んだときに
遠くで大きな音がしました。
さっちゃんはふと目を覚ましましたが
またスーッと夢の続きに戻って行きました。
カーテンから漏れる光がいつもよりまぶしいのに気がついて
ゴソゴソとお布団から這い出てきたさっちゃんが
そっと窓を開けてみるとビュン!と暖かい風が入ってきました。
春一番です。
一瞬目を閉じてしまったさっちゃでしたが
次に見たものは雪のない庭でした。
あんなに深い雪が一晩で消えてしまうなんて…。
「あたしがあんなことをいったからうさちゃんが消えてしまった…。」
ちょっと泣きそうになってうつむいたときに
やさしくて温かい声が聞こえました。
「ゆきうさぎさんには今度雪が降ったときに、すぐまた会えるわよ。」
ちょうどさっちゃんがゆきうさぎを置いたところに
一輪のスミレが咲いてるのに気が付きました。
「わぁ♪これがうさちゃんからのお誕生日プレゼントね。
ありがと、うさちゃん。また雪の降る日に逢おうね。」
青い青い空を見上げて、さっちゃんは静かに手を振りました。
「ゆうべ、春雷が鳴ったわね。めずらしいわ、こんなに早く。」
お味噌汁の味見をしながらおかあさんがいいました。
「今日はさっちゃんの5歳のお誕生日ね。なんのごちそうを作ろうかしら。」
ちょうどその頃、山のふもとのバスに町からのバスが止まり
両手にたくさんのおみやげを抱えた男の人が降り立ちました。
さっちゃんへ、ゆきうさぎさんのほんとうの贈り物がもうすぐ届きます。
作品名:ゆきうさぎのおくりもの 作家名:遊花