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ゆきうさぎのおくりもの

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まず、ゆきうさぎが訪ねたところは怖い雷さまのところでした。

「こんにちわ。雷さま。」

恐々と声をかけると
眠っていた雷さまは不機嫌そうに振り向いていいました。

「誰だぁ!せっかく気持ちよく寝てたのに。」

「お願いがあります。ちょっと早いけど春を告げる鐘を鳴らしてほしいのです。」

雷さまは寝ぼけ眼をこすりながら
大きくあくびをして背伸びをしてみせました。

「誰かと思えばゆきうさぎじゃないか。
 春を告げる鐘を鳴らすのは簡単じゃが…そんなことしたらおまえ…。」

「いいんです。大好きさっちゃんのお誕生日のプレゼントなんです。
 さっちゃんの喜ぶ顔が見たいから。」

そういいながらゆきうさぎは南風さんのところへ急ぎました。
南風さんは早起きして準備体操をしている最中でした。

「まぁ、こんにちわ。ゆきうさぎさん。
 こんなところまでめずらしいじゃないの?」

ゆきうさぎは息をはずませながらいいました。

「南風さん、少し早いかもしれないけれど
 そろそろ地上まで下りてきてはくれませんか。」

「春を告げる風のこと?いいけど、そんなことをしたらあなた…。」

額に流れる汗を拭きながら、ゆきうさぎは息を整えました。

「僕は大好きなさっちゃんから生まれたんです。
 さっちゃんのためならなんでもしてあげたい。」

南風が心配そうに見送るなか
ヘトヘトになった身体で太陽の近くまで急ぎました。

「ちょっと待ちなさい!これ以上近づくと危ないよ。」

びっくりした太陽がゆきうさぎに声をかけました。

「ああ、太陽さん。お願いがあるんです。
もっともっと強く、僕らを照らしてほしいんです。」

「そんなことお安いご用だけれど、それじゃあ君が…。」

もうなにも聞かないでとばかりに、ゆきうさぎは首を振りました。
そして最後の力を振り絞って山へ下りていき
雪をかき分けながら寝ている花の種や、木の芽
それに虫たちを揺り起こしてまわりました。

「起きて、起きて!もうすぐ雪が溶けるよ。春が来るんだよ。」

ゆきうさぎの声はかすんで、やがて聞こえなくなりました。
作品名:ゆきうさぎのおくりもの 作家名:遊花