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関西夫夫 ポピー4

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家までタクシーで帰ったので移動の疲れはない。ハイツの階段を上ったら、我が家に到着。玄関で、やれやれ、と、ネクタイを解いた。あのハイテンションの会話は疲れたんで、もうしゃべらんでええと思うと、ほっとする。亭主は先に入って電気を点けている。食卓の前でスーツを脱いで、ワイシャツとパン一になったら腹がなった。そこそこ食ったつもりやったが、量は足りてなかったらしい。亭主のほうは、俺が食卓の椅子に座ったら、明石焼きの準備をする。
「茶漬けもいくか? 」
「いや、それでええ。」
「スーツだけハンガーにかけとけ。シワになる。・・・あと、風呂にお湯いれてんか。」
「へーへー。」
 とりあえず寝る準備をする。明日から通常出勤なんで、睡眠は必要や。昨日の晩は、あんま寝てないので風呂入ったら、速攻で寝られる。段取りして戻って来たら、夜食の準備は終わってた。出汁を味噌汁椀に入れてチンしたやつに、冷たいままの出汁を足して俺用に温度調整してた。
「紅しょうがと三つ葉は、お好みで入れ。・・・・はい、完成。水都、こっちのパックが、おまえのんやからな。こっちはチンしたるから食うなよ。」
 二人前のパックがあって、片方は湯気が出てた。まあ、本来の明石焼きは熱々のもんなんで、旦那の食うほうが正解や。いただきます、と、冷めた明石焼きを、ぬるーい出汁につけて口にしたら、美味かった。俺が食える温度になってるんで、なんの心配もない。ふわっとしたとこからタコが出てくる。胃に落ちていくと、さらに食うために明石焼きを箸で椀に投げ込んだ。どんだけ食べても熱くてヤケドすることはないんで、いっきに五個くらい食った。
「ちゃんとした明石焼きって、あんま売ってないから、なかなか食えへんけど、たまに食うと美味いなあ。」
「さよか? うちの会社の近所にあるで。持ち帰りしたろか? 」
「そのうち頼むわ。あと、神戸コロッケもあるけど、摘むか? 」
「一個。」
「はいはい。」
 俺の旦那は、いろいろと買って来たらしい。神戸コロッケも出て来た。これもチンしてないから、そのままかぶりつく。肉じゃがみたいな具が入ってるので、たまに食うと美味い。俺の旦那は、二個ほど食ってから、また熱々の明石焼きに戻っている。
「食ってないんか? 花月。」
「いや、ラーメンと餃子は食ったけど、物足りへんとは思ってたんや。ほんで、おまえが美味そうに食うと俺も食いたなるって感じやな。ほんまは明日のおかずにするつもりやってんけどなあ。」
「さよか。やっぱ、おまえと食うんでないと味が、わからんから食欲が失せてあかん。・・・・・おまえと一週間ぐらい三食食ったら鶏がらから脱出すんのかもしれへんな。」
「うーん、一週間か・・・・俺は有給使えるけど、おまえがなあ。」
 一応、俺にも有給はあるが仕事が忙しいんで、一週間丸々休むのは難しい。ついでに、この旦那と一緒やとメシより性欲処理のほうが優先になるんで、三食食うのが不可能やったりする。年末年始なんか休みでも、普段よりメシは食うてないよーに思われる。
「もうちょっと年取ったら太るんやな? 俺は。エッチせんでよーなったら、メシ食う時間も確保されるわけや。」
「それ、だいぶ先やと思いますで? 水都さん。」
「ん? そうか? 」
「野郎なんか、適度にやってたら勃たなくなんのも年寄りになってからやぞ? だいたい、おまえ、嫁やから勃たんでも、できるがな。」
「花月が勃つ間は、俺は使われるっちゅーことか。」
「そうでおますな。ごめん、まだ枯れそうにない。てか、弁当しよか? 」
「いらんいらん。そんなきっちりしたメシ食ったら、しんどい。」
 昼飯を適当にしているのはバレてるので、折につけ、俺の亭主は弁当作成を提案してくれるのだが、そこまでしてもらうのも悪いので断っている。それに昼飯を、きちんと食うと晩飯が入らへんという事態が俺に発生する。学生の頃は、ほぼ一日一食やったんで、胃が小さく固定されているらしい。そんなことで、コロッケを合いの手にすると明石焼きは食いきれなくなる。全部で十個の残り三個が入らなくて、亭主のほうへ押し出した。
「ごっそさん。」
「おう、よー食ったな? 感心感心。」 
 残りの三個は亭主が、ばくばくと食った。一息ついて、タバコを吸うと、ほっとする。どんだけ高くても食べる相手が違うと、美味さがわからんから、俺は高いもんは食わんでもええらしい。



 翌日は、普通に出勤して仕事して、その次の日は事務所の見学に、ぼんくらどもはやってきたが、大した時間ではない。それから支店で、半日ほど手伝いさせて晩は接待メシを食わせたら終了やった。後半は、それほど関わらなんでよかった。まあ、いろいろと俺に対するアプローチはあったらしいが、添乗員さんやら嘉藤さんが適当に潰したとのことや。

 数日して、東川さんが靴屋の場所を教えてくれた。「準備ができたから行ってええそうや。場所がわかりにくいから、わしが案内しよか? 」 と、言うてくれたが、断った。俺の旦那と行くので、他の面子は、ご遠慮していただきたかったからや。このおっさんらとの邂逅を黒歴史と呼んでる花月にしたら、なんぼ、ええ靴をタダにしてもらっても逢いたくないやろう。
「いや、大丈夫です。」
「爆弾小僧と行くんか? 」
「まあ、そんなとこですわ。」
「わかった。電話番号も転送しといたるから、わからんかったら相手さんに電話しぃ。」
 俺の携帯に場所と電話番号を送ってもらった。明日の予定を花月にメールで確認すると、行ける、というので東川さんと打ち合わせした。最終の締めを、普段は俺がやってるが、東川さんに代わってもらうこともできる。その場合は、事前に頼むことになる。
「かまへんで。ほな、明日は、わしが締めとくさかい。チェックは明後日してくれ。」
 平日なら、それほど仕事量が増えるわけではないので、二つ返事でオッケーが出た。それなら、ついでに晩飯は外食したら、ええやろう。そこいらは亭主に丸投げしておくことにした。俺は、料理なんてもんは、なんでもええわけで、こういう時は亭主の食いたいもんということになる。
「場所が遠いこともないし、そこいらの居酒屋でメシをいわそうか? 」
「なんでもええけど、そんなんでええんか? なんか、ええやつでもええで? 俺、おごるし。」
「どあほ、おごらんでええ。家計費の範囲で結構や。せやな、せっかくやったら魚のおいしいのんにしょ。」
「タコか? 」
「あったらな。まあ、探しとくわ。平日なら、混むこともないやろ。」
 ということで、靴を選んで外食というデートコースになった。亭主のほうは忙しい時期やないので、定時で上がれるから待ち合わせすることにした。靴屋の最寄り駅で顔を合わせて、歩き出したが、さすがにややこしいと言われた場所で、よくわからん。腹立たしいことに携帯で検索して場所の指定ができても細かいとこまでは載ってないし、店もネットでは表示しない。
「電話しよか? 」
「うーん、たぶん、こういうビルのテナントやと思うねんけど・・・・住所にビル名があらへんなあ。」
「ということは一軒の店ってことか。」
作品名:関西夫夫 ポピー4 作家名:篠義