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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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千のかがやき

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 よいちの村は冬でも暖かく、土地もよいので作物がよく実ります。けれど平野が少なく、人々は山を階段のように切り拓いて田んぼを作ったので、農作業はたいへんな重労働でした。
 年取った殿様は百姓のそんな苦労を知っていましたから、年貢はよその村よりも軽く、三割納めればよいことにしていました。
 ところが新しい殿様になったとたん、急に年貢が二倍になってしまったのです。
 若い殿様はとてもわがままで、自分のぜいたくのために、お金を集めることしか考えません。殿様のまわりには、おこぼれにあずかろうと、おべっかをつかう者ばかり集まり、意見を言う人は、みな追放されてしまいました。
 百姓たちの苦労をよそに、殿様はますますぜいたくになり、とうとう、とんでもないことを言い出しました。
「だれも持っていない宝がほしい。それをさがしてきたものには、望みのほうびをやる」
 おふれをきいて、国中の村の名主や、金もちの商人が、めずらしいものをもってきました。けれど金や銀やサンゴなど、倉に入りきれないほど持っている殿様は、ほうびをやるどころか、なんくせをつけて宝を没収してしまったのです。

 さて、このおふれは、よいちの村にもとどきました。
「わしら百姓に、宝なんぞあるわけがない」
 みんなは口々に言いましたが、よいちは、これは殿様に会える良い機会だと思い、自分の田んぼで、あれこれ考えをめぐらせました。
 よいちの田んぼは、山のてっぺんにあります。ですから水を引くにも、田植えをするにも、まして刈り取るときにも、それはそれはたいへんでした。ですが、山のてっぺんから見る村の景色は、そんな苦労も吹っ飛ぶほど、美しいものだったのです。
 一日中考えているうち、夜になりました。
 月がのぼってきたとき、よいちは枯れた田んぼを見渡して、はっとひらめきました。
「よし、春になったら殿様に知らせよう」

 春になると、よいちはさっそくお城へ出かけました。
「殿様。世界にたった一つの宝を見つけました」
「そうか。ではここに出してみよ」
「恐れ入りますが、わたしの村へお越しください」
 殿様は、金ぴかのかごに乗って、よいちの村へやってきました。
 よいちは先に立って、山へ登りはじめます。
 最初は、元気にかごをかついでいた家来たちも、あまりにも急で、まがりくねった坂道に根を上げて、ついには動けなくなってしまいました。
作品名:千のかがやき 作家名:せき あゆみ