千のかがやき
よいちの村は冬でも暖かく、土地もよいので作物がよく実ります。けれど平野が少なく、人々は山を階段のように切り拓いて田んぼを作ったので、農作業はたいへんな重労働でした。
年取った殿様は百姓のそんな苦労を知っていましたから、年貢はよその村よりも軽く、三割納めればよいことにしていました。
ところが新しい殿様になったとたん、急に年貢が二倍になってしまったのです。
若い殿様はとてもわがままで、自分のぜいたくのために、お金を集めることしか考えません。殿様のまわりには、おこぼれにあずかろうと、おべっかをつかう者ばかり集まり、意見を言う人は、みな追放されてしまいました。
百姓たちの苦労をよそに、殿様はますますぜいたくになり、とうとう、とんでもないことを言い出しました。
「だれも持っていない宝がほしい。それをさがしてきたものには、望みのほうびをやる」
おふれをきいて、国中の村の名主や、金もちの商人が、めずらしいものをもってきました。けれど金や銀やサンゴなど、倉に入りきれないほど持っている殿様は、ほうびをやるどころか、なんくせをつけて宝を没収してしまったのです。
さて、このおふれは、よいちの村にもとどきました。
「わしら百姓に、宝なんぞあるわけがない」
みんなは口々に言いましたが、よいちは、これは殿様に会える良い機会だと思い、自分の田んぼで、あれこれ考えをめぐらせました。
よいちの田んぼは、山のてっぺんにあります。ですから水を引くにも、田植えをするにも、まして刈り取るときにも、それはそれはたいへんでした。ですが、山のてっぺんから見る村の景色は、そんな苦労も吹っ飛ぶほど、美しいものだったのです。
一日中考えているうち、夜になりました。
月がのぼってきたとき、よいちは枯れた田んぼを見渡して、はっとひらめきました。
「よし、春になったら殿様に知らせよう」
春になると、よいちはさっそくお城へ出かけました。
「殿様。世界にたった一つの宝を見つけました」
「そうか。ではここに出してみよ」
「恐れ入りますが、わたしの村へお越しください」
殿様は、金ぴかのかごに乗って、よいちの村へやってきました。
よいちは先に立って、山へ登りはじめます。
最初は、元気にかごをかついでいた家来たちも、あまりにも急で、まがりくねった坂道に根を上げて、ついには動けなくなってしまいました。
年取った殿様は百姓のそんな苦労を知っていましたから、年貢はよその村よりも軽く、三割納めればよいことにしていました。
ところが新しい殿様になったとたん、急に年貢が二倍になってしまったのです。
若い殿様はとてもわがままで、自分のぜいたくのために、お金を集めることしか考えません。殿様のまわりには、おこぼれにあずかろうと、おべっかをつかう者ばかり集まり、意見を言う人は、みな追放されてしまいました。
百姓たちの苦労をよそに、殿様はますますぜいたくになり、とうとう、とんでもないことを言い出しました。
「だれも持っていない宝がほしい。それをさがしてきたものには、望みのほうびをやる」
おふれをきいて、国中の村の名主や、金もちの商人が、めずらしいものをもってきました。けれど金や銀やサンゴなど、倉に入りきれないほど持っている殿様は、ほうびをやるどころか、なんくせをつけて宝を没収してしまったのです。
さて、このおふれは、よいちの村にもとどきました。
「わしら百姓に、宝なんぞあるわけがない」
みんなは口々に言いましたが、よいちは、これは殿様に会える良い機会だと思い、自分の田んぼで、あれこれ考えをめぐらせました。
よいちの田んぼは、山のてっぺんにあります。ですから水を引くにも、田植えをするにも、まして刈り取るときにも、それはそれはたいへんでした。ですが、山のてっぺんから見る村の景色は、そんな苦労も吹っ飛ぶほど、美しいものだったのです。
一日中考えているうち、夜になりました。
月がのぼってきたとき、よいちは枯れた田んぼを見渡して、はっとひらめきました。
「よし、春になったら殿様に知らせよう」
春になると、よいちはさっそくお城へ出かけました。
「殿様。世界にたった一つの宝を見つけました」
「そうか。ではここに出してみよ」
「恐れ入りますが、わたしの村へお越しください」
殿様は、金ぴかのかごに乗って、よいちの村へやってきました。
よいちは先に立って、山へ登りはじめます。
最初は、元気にかごをかついでいた家来たちも、あまりにも急で、まがりくねった坂道に根を上げて、ついには動けなくなってしまいました。