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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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飼い主に…似るのかも…。

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毎年のように育てているトマトさん。
もちろん今年もあいちゃん畑(ベランダのプランター)に参加した。
ミニトマトではなく、大玉トマト一株。
二、三株欲しい所だけど、摘んだ脇芽がもったいないので、時間差でそれを新しい株として植える。
これも節約、節約…、なんて思いながら結構な時間がかかる脇芽さん。
それでも、もったいない脇芽さんはたくさん出来てしまうので、私としては貰い手がいてくれたらな~なんて思う。
そこで閃くのが…、やっぱりひろみさん!!
聞いてみたら、案の定、二つ返事で、“オッケー”との事だった。
そうなると、脇芽さんたちが、
『ワクワク、ワクワク。』
とアラレちゃんかよ!!と突っ込みたくなるくらい興奮し出す。
どうやら、スタンダードプードルのコス(本名;コスモス)に会いたいらしい…。
何故?!という言葉が頭を過る。
親トマトが、
『ボス!!』
と一言。
よく分からんが、人間と同じように何かしらの理由が各々あるということだ。

それからは、牛乳パックを器として水に浸かってる茎から根っこが出るのを毎日待ち続けた。
一日目は葉っぱが落ち込むけど、茎が水を吸い始めると、たちまち葉っぱが元気を取り戻す。
それを見て私は、うんうんと肯く。
肯く私に、
『ちゃんと頑張ってるよ~。』
と脇芽さんたちは言う。
その言葉にまたも、うんうんと肯き返す。

一、二週間ほど経った頃には、白いおヒゲがニョキニョキ現れて、
『もうそろそろ土にお引っ越ししてもいいと思うよ~。』
と脇芽さんたちから聞こえ始める。
『ん~…、どうだろうか…。もういいかね~。でも、もう少し根っこが伸びた方がもっと安定するんじゃないかと…、そうも思う。』
と私が言うと、脇芽さんたちから眉間にシワを寄せたような気持ちが伝わり、
『そうかな~。まだ止めた方がいいかな~。…それじゃあ、もう少し様子見る?!』
と一緒に考え込む日々がしばらく続く。
そんな事を楽しくやり合う毎日の中、
『もういいよ~。』
と脇芽さんから聞こえた。
かくれんぼをしてるわけじゃないのに…、と思いながら牛乳パックを覗き込んで根っこをチェック。
白いおヒゲの根っこが十センチ近くも伸びている。
これはお引っ越ししても大丈夫かも…。
そしてその日に、水入り牛乳パックから、土入り牛乳パックへとお引っ越しした。
土入りの牛乳パックの底には穴を開けて、水捌けが出来るようにした。
少し土を入れて、脇芽さん一つを手に取り牛乳パックの真ん中に持って来た。
根っこの先が土に触れた瞬間、
『気持ちいい~。』
と聞こえた。
私は植物じゃないからその気持ちよさなんて知らない。
しかしそういう事で植物は土が好きなんだと私は知る。
また一つ勉強。
そしてちょっとずつそっと土を足して行った。
足す毎に脇芽さんからの喜びが一回一回伝わってくる。
本当に土が好きなんだと感じると、こちらまで嬉しくなる。
そして一言、
『おいしいっ!!』
なんて聞こえると、土作りもちゃんとしなくちゃ!!と思い知らされ、また一つ勉強…、となる。
小さな脇芽さんだけど、そういうことを一つ一つ教えてくれる。
小さな事だけど、とっても大切な事。
ついつい見落としてしまう事を当たり前に大事に教えてくれる。
優しいなぁ~と思った私に、
『自分たちの為だよ。でも、育ててくれるのはあい(仮名)ちゃんだから、与えてくれた事にお返しをしてるだけだよ。それに、美味しくなった方がいいでしょ?!』
と脇芽さんは当たり前の事を言い、納得させられた。

お引っ越しした先の土に安定するかが心配だったけど、葉っぱが落ち込むことなく安定した。
それを見てうんうんと肯いた。

まっ、そんな会話は脇芽さんとだけで、親トマトは何も言わない。
どうしてか、喋らない時は喋らない。
まっ、私が睨み付けて、
『あ~れや、こ~れや、うるさいっ!!』
と言うからだと思う…。
そんな中、遂に?!というか、申し訳なさそうに親トマトが口を開いた。
『あの~…、そろそろ、肥料のほうが…。コホッコホッ。あの~、肥料がなくなって来たような…。』
とわざとらしく咳を入れて来た。
チラッと見て、その後無視をした。
また同じ事を言われたので、
『が・ま・んっ!!』
と言ったら、
『あっ、…。』
と言ったっきり黙った。
そして私は、
『よしっ!!』
と肯いた。

が、しかし、そこで終わらなかった。
まあ、毎年同じ調子が起こってるから、いつも通りなんだけど…。
次の日も気を抜いてる瞬間に、
『あの~、肥料のほうが…。』
と聞こえた。
『面倒くさいから、自力で頑張って~。』
と言ったら、
『頑張れたらいいんですけど…、それは…どうしても無理です…。』
と言う。
日を追う毎に言われる回数も増えて行き、私のこの重い腰が一週間後くらいに上がった。

土を少し掘って、そこにスコップで肥料を入れたら親トマトが、
『あっ、こっちも。それとこっち側も。』
と態度が変わって行った…が、それに気付かず、
『何処?!こっちってここ?!』
と聞いて、土を掘ってたら、
『もう少し先まで穴を伸ばして。』
と細かい注文。
それに、
『はいはい。』
と応えて動く私…。
私も気付くのが遅いから、それを分かってか親トマトは急がせる。
そんな中、何を思ったか、ニガウリが現れた…。
『あいちゃん、こっちも!!油かす多めで!!』
と…。
気付いた時には結構進んでた。
悔しい~!!
『も~っ!!みんな言い過ぎっ!!』
と畑全体に言ったら、無視されて、
『はい、こっちも!!』
とバジルが…言った…。
その後、足元にいた小ねぎが、
『すみませんが、こちらも…。ネギはすぐに育つとか、勝手に育ち続けるとか言われますけど、やっぱり肥料はいりますよ。』
と早口で言われた…。
まさかと思ってたけど、本当だった。
小ねぎの成長が悪いな~と思っていたここ最近。
寿命かと思っていたところ、そんな事を小ねぎに言われ、疑いながらも肥料をあげた。
びっくりするくらいいきなり成長した…。
恐るべしっ!!肥料~っ!!
その後の小ねぎの事を言うまでもなく、ドヤ顔だった…。
まっ、美味しかったから…許すっ!!

とまぁ~、こんな性格のトマトさん…。
ひろみさんちに行っていいのだろうか…。
ひろみさんを扱き使わないだろうか…と、心配しながら脇芽さんを育てる。

根っこも安定して、ひろみさんちへとお引っ越しとなった。
“どうか、お利口さんでいますように…。パンパンっ!!”
という思いで渡す。
そんな私の気持ちなんて汲み取っちゃいない脇芽さんたちは、ひろみさんに会うなり、
『せーの、ひろみさん、よろしくお願いします。』
と言いやがった。
こんなにお利口さんだったっけかな~?!
なんか違うような…。
でも、まっ、脇芽さんたちだから、親トマトとは違うのかも…。
そしてそれから、ひろみさんちで育ち続ける脇芽さんたちの写真が届いた。
その写真を見て私はたまげたっ!!
体を左右に揺り動かしながら、
『ルンルン!!ルンルン!!』
と喜んでいる。
そしてひろみさんの事を上目遣いで甘えてるような姿で見ていた。
ウソでしょっ?!
ありえんわ~。
その写真の脇芽さんに向かって、