はちみつ色の愛人
湯もはり終わり、二人一緒に脱衣所で服を脱ぐ。
何も喋らず、ただ黙々と服を脱ぐ。
ガ、チャン。
思いドアを開き、バスルーム。
広いというわけではないが狭くもない。至って普通である。
私は徐にバス用のプラスチック製の椅子に座り、「頭洗って」と言った。
「いいよ。」
陸斗はシャワーのコックをひねり、適当に身体を流させる。
「目、閉じてね。入ると痛いから。」
「はぁい」
シャンプーのポンプを二、三回押し、私の頭を洗い始める。
優しい。
大きな手が、少し太くなった指が。頭を優しく、だけど力強く洗ってくれた。
頭を流して、次はリンス。
毛先に揉むように馴染ませ、軽く流す。
心が安らぐようであった。心地いい。
「ありがと。じゃぁ私が今度は洗ってあげるから、座ってよ。」
立ちあがり、私はそう言った。
「ありがとう。」
陸斗は微笑んでそう言った。
湿った浴室によく響いた。
いつも陸斗が使うシャンプー。私のと陸斗のしか無いからすぐに分かる。
手に取り、濡れた陸斗の頭をわしわしと洗う。
優しく、強く。っていうのが分からないから、適当にやったんだけど、陸斗は喜んでくれてたみたい。
「ほい、じゃぁ洗って。」
私は胸を張って向かい合う。小さい乳房がぷるんと揺れた。
陸斗は下には目をやらないで「いいよ」と言う。
身体を洗うスポンジにボディソープを垂らして、私の背後から洗う。
私の小さな肩に左手を置いて、陸斗は優しくスポンジを滑らせる。
乳房も、性器も、直視はしてないみたいだったけどちゃんと洗ってくれた。
ゆっくりすぎたから肌がむず痒かったけど、我慢した。私も子供じゃないからね。
「何で見ないの」
「またそういう話する・・・。僕はそういう話は・・・」
「そうじゃなくって、もういいよ。ほら、洗ってあげるから後向いて。」
私の身体は堂々と見せられたものではない。
貧相な身体なのだ。
ガリガリという表現が一番良いというくらい。
ガシガシとスポンジで洗う。
男の肌は硬い。陸斗はあまり運動もしないし、外にも出ないから肌が白い。
なのに、硬い肌をしている。
「陸斗の肌は硬いね。」
「だって、一応男だもん。それに、君の肌は柔らかい。それは女の子だからだよ」
どんな理屈なんだ。と心の中で突っ込み。
そして身体にまとわる泡を流してあげた。
「私はね」
流してる最中、口を開く。
「親友だからこそ、全部見せたいと思うわけ。」
淡々と、独り言のようであるが、ハッキリと。
「恋人とかは、全部見せるとか無理だもん。親友には何でも話したいよ。」
淡々と、淡々と。
「だから流し合いっこしようって言ったんだよ。」
私は陸斗に後から抱き付く。
少し乾いた私の肌が吸い付くように、ぴとりと。
乳首の突起も当たっていた。
当てているわけじゃない。この状態で抱きつけば誰だってそうなる。
「ねぇ、恋人って何?二人でSEXもちゃんとして、愛を確かめ合って、子供産んで、二人で幸せになるのが恋人? それとも。私達みたいにただこうやって、何もしないけど雰囲気だけっていうのが恋人なの?」
「分かんないよ。」
「私は、もし後者が恋人だとしたら、あんたとも恋人になれる自信あるよ。」
ぴちょん
水滴が滴る音がした。
「私は前者の方が恋人だと思うの。ちょっとくらい隠し事のあるような、幸せの為ならなんだってできるような関係。」
「だとしたら僕らはなんなんだろう。親友・・・より行き過ぎた。こう・・・。」
「そうだね。」
私は目を瞑って考える。
「あいびと、かな。」
「あいびと?」
「そ、愛人(あいじん)じゃなくて、愛人(あいびと)。隠す事のない。裸の自分を見てもらえる存在。それがあいびと。」
「へぇ。」
お互い、黙ってしまう。
5秒、6秒、7秒・・・。
「じゃぁ、出ようか」
私がそう言わなければ、ずっとこのままの状態であっただろう。