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覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】

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          ※※※※※※
 「大きくなったな、清雅」
 叔父に戻った狼靖が、清雅の背を強く抱く。
 15年前、妹・桜の後ろに隠れていた小さな少年は、今や狼靖の背を超し、剣の腕は四国最強となった。叔父として何もしてやれなかった後悔で一旦は剣を封印し、彼の前から去った狼靖だが、もう逃げない事を誓った。
 「死ぬなよ、クソ親父」
 「クソは余計だ。死なぬ。お前が覇王となり、吾が剣を振るえなくなるまではな」
 「やっぱり、あんたはクソ親父だぜ」
 「帰ってこい。必ず、清雅」
 「…ああ」
 そんな彼らの後ろで、咳払いがする。慌てて身を引いたのは清雅だった。
 「…お取り込み中失礼します」
 「拓海っ、お前いつから…!?」
 「うーん…、さっきです」
 「………狼靖、あんた息子の躾間違ってねぇか?」
 「彼は、貴方の従弟ですよ」
 主従の関係に切り替わった二人の前で、拓海は笑っている。
 「清雅さまって___」
 「___何だよ」
 「ファザコンなんですね」
 「拓海、てめぇ!!」
 掴みかかろうとした清雅をひょいと交わし、拓海が逃げる。
 ____必ず、帰って来ましょう。みんなと一緒に、清雅さま。
 星空の下、一時ただの従兄弟同士となった彼らの声がいつまでも響いていた。
 
 翌朝、清雅たち四獣聖は蒼国王城を経った。
 「とりあえず、北国街道だね」
 黒抄国へ向かうには、一番早道である。
 「焔、そう簡単に、黒抄領内には入れん」
 「あん?」
 「黒抄最強、二武将がいるからな。それに、白碧も黙ってねぇ」
 恐らく、一番の敵は白碧だろうと清雅も星宿も考えている。
 そんな彼らの後ろで不安そうな、天狼に拓海がにっこりと微笑みかける。
 「大丈夫ですよ。御父上は必ず救い出します」
 「…はい、拓海さま」
 「行くぜ」
 清雅は、手綱を引き一歩を踏み出す。
 覇王への一歩を。
 その先に、更なる試練が待ってるとは未だ知らぬ初夏の旅立ちであった。

--------------------第一部 完----------------------------