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声劇台本「ヒヨコも女神を愛したい」

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登場人物
・ヒヨコくん
マドンナのことが大好きすぎて、奇行に走りがち。

・マドンナ
男子のマドンナ的存在。超かわいい。

・友
ヒヨコくんの友達。


「 」実際に言ったセリフ
『 』心の中のセリフ
【 】テロップ
( )補足説明


 ヒヨコ 「(大げさに演技してる感じで)ええっと、
      だいすき、大好きです! どこが好きかと
      言われれば、嫌いなところなんてないくら
      い大好きです‼︎ 愛してます! こんなこ
      とを言ったらあれですけれども、あなたは
      何度も夢に出てきて、何度も僕のことをな
      ぶるんです! それが幻であることを何度
      嘆いただろうかっ……! しかしそれも、
      貴方が僕の告白を受け入れてくれればっ、
      叶うことなのです! ああ、僕は貴方の為
      ならば、命さえも惜しくない!」

◎マドンナ「じゃあ死んでくれない?」

 ヒヨコ 「(素に戻って)はっ……」

     (SE:駆け足)
     (SE:窓ガラスの割れる音)

◎マドンナ「……えっ」

(窓から飛んだヒヨコくんを見下ろすマドンナ)

◎マドンナ「ちょっ、えぇ⁉︎」

        ***

     (保健室に移る)

◎マドンナ「……まさか本当に死のうとするとは思わな
      かったわ」

 ヒヨコ 「ええ! これが僕の本気です」

◎マドンナ「二階でよかったわよ、本当……あと雪。無
      かったら多分、死んでたからね? あなた
      の身体能力どうなってるのよ」

 ヒヨコ 「いやぁ、人間、愛のためならなんでもでき
      るものですね!」

◎マドンナ「あたしは好きな子の為に死にたくないわ
      よ」

 ヒヨコ 「それはきっと愛ではないのです。僕なら、
      きっと貴方に愛を教えることができる!」

◎マドンナ「ぴーちくぱーちく煩い。わかったわ、これ
      からあなたのことをヒヨコと呼んであげ
      る」

 ヒヨコ 「ひっ……」

 ヒヨコ 『ヒヨコ、というのは人名に使えるのだろう
      か。改名申請にどう書けば受理されるだろ
      う? 恋をした相手がそういうので変えま
      す……んー、無理だな。最もらしい理由を
      でっちあげるしかないのか』

◎ヒヨコ 「うーん……」

◎マドンナ「……今度は改名するつもり?」

 ヒヨコ 「どうしてわかったんですか⁉︎ はっ、そう
      かこれが愛の成せる技……!」

◎マドンナ「声に出してたわよ」

 ヒヨコ 「なんと」

◎ヒヨコ 『同い年だというのに、周りよりも大人びて
      見える彼女は、我々男子の中でマドンナ的
      存在なのである。クラスの女子が校則を破
      り、次々と欧米紛いの金髪になっていく
      中、黒髪を貫いているというだけで、萌え
      ポイントは高い。ほぼ唯一の友が言うに
      は』

◎友   『吸い込まれそうなアーモンド型の黒い瞳
      と、前髪ぱっつんの黒髪は、現代のJKに
      はない清楚さをかもしだし、けれどツンデ
      レな部分もあり、さながら闇夜に紛れる黒
      猫のようである‼︎』

 ヒヨコ 『だそう……省略すると超かわいい。』
 
 ヒヨコ 「(独り言)愛する彼女と感覚が繋がる奇跡
      は、訪れなかったのか……」

◎マドンナ「(困惑気味に)えっと……ていうか、あた
      しあなたの本名も知らないし、同じクラス
      になったこともないだろうし、どうして好
      きになられたのかさっぱりわからないんだ
      けど」

 ヒヨコ 「えっ僕同じクラスですよ」

◎マドンナ「マジで?」

 ヒヨコ 「まじです」

◎マドンナ「ごめん、悪気はなくて……その、気づいて
      なかったっていうか……本当ごめん」

◎ヒヨコ 「いいんですよ。教室の隅で黙々と本を読ん
      で、昼時に飯を食らい、時々排泄に向か
      う。そういう人間なので」

◎マドンナ「退屈じゃないの?」

 ヒヨコ 「あなたのことを、考えているので。愚問で
      す」

◎マドンナ「(ため息)ふうん……そっか、じゃあそろ
      そろあたし帰るわ」

 ヒヨコ 「ああぁ……はい。もう六時ですもんね。何
      だか勝手に告白して、勝手に死にかけたの
      に、こんな時間までついててもらっちゃっ
      て……」

◎マドンナ「いいわよ。君面白いし。初めてよ、こんな
      に面白い告白してくれたの。じゃあね。お
      大事に、ヒヨコくん」

 ヒヨコ 「あ、はい、ありがとうございます……」

 ヒヨコ 「やっぱり好きだなぁ……」

        ***

     (翌日の昼休み、教室)

 ヒヨコ 「マドンナに告白した」

◎ヒヨコ 『翌日の昼休み。唯一の友に昨日のことを報
      告したら』

◎友   「んぶっふ」

◎ヒヨコ 『いきなり吹き出された。この友というの
      が』

◎友   『ツイッターで女子高校生のフリしてた
      ら、フォロワーが20000人を超しまし
      た!』

◎友   『最近クラスの女子の大体のスリーサイズを
      目測することができ始めました!』

◎ヒヨコ 『まぁ、変態なのだけど』

◎友   「マジかよ。お前踏み切ったな~」

 ヒヨコ 「うん。今でも夢じゃないかって思ってる
      よ……だってこんな冴えない男の告白の呼
      び出しに本人が来てくれただけじゃなく
      て、僕の新たな名前まで考えてくれたんだ
      よ! 女神!」

◎友   「結果は? まあ惨敗だと思うけど」

 ヒヨコ 「結局、うやむやになって……」

(昨日のことを説明するヒヨコくん)

◎友   「貴様……あのマドンナと会話したばかり
      か、『面白い』と言われただと……? そ
      んなぐるぐるまきの包帯の下じゃあもの足
      りん!」

     (筆箱で殴る)

 ヒヨコ 「あいたっ」

◎友   「死ねっ、できれば苦しめこのっ!」

 ヒヨコ 「や、やめ! ほらみんなこっち見てるか
      ら……ってあれ」

◎友   「ん、なんだ走馬灯でも見えたか」

 ヒヨコ 「いや……マドンナがずっとこっち見てるか
      ら」

◎友   「えっ」

◎マドンナ「ヒヨコくん」

 ヒヨコ 「へ、えええっ⁉︎」

(立ち上がって歩み寄るマドンナ)

◎マドンナ「こんにちは。あなたそこの席だったのね」

◎ヒヨコ 「こっここここここここんにちは」

◎友   「ぶっはwww」

◎マドンナ「あら、昨日までヒヨコだったのに、今日は
      ニワトリなのかしら。成長が早いのね」

 ヒヨコ 「そ、そうですか?」