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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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肝試し

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 次は3人目のお化けに備え、周囲の気配に慎重になりながら歩いた。しかし、行けども行けども、次のお化けは出てこなかった。普通ならとうに、出現してもいいくらいの距離を歩いたはずなのに、何も出てこない。そうして不信がって歩いていると、沢の向こう岸に、女の人らしき人影が立っているのが見えた。

ぼんやりとした暗がりの中で、白い服を着た女が大きな木の横に立ち、うつむいて何もしないで立っているようだった。
「こっち見てる?」
「下向いてるんじゃない?」
大学生のお姉さんと僕の友達が、そんなことを話していたけど、あれは間違いなく僕らをにらんでいた。
「懐中電灯で照らしてみようか」
という意見が出たが、絶対にギブアップしないで行こうと約束していたので止めておいた。
「あれマネキンじゃないの?」
と言う子もいて、それを囮にして後ろから脅かされないか急に警戒したが、何も起きなかった。結局、その人影はまったく動かず、声も出さず、ただ立っているだけだったので、僕たちは不審に思いながらも、足早にその場を通り過ぎた。

 これで3人のお化けが登場した。出発前に5人のお化けが出ると聞いていたので、残りは2人だ。
 僕たちはまた、静かな山道を上りはじめた。この頃には、前の班はすべてゴールしていたのか、他の叫び声は聞こえてこなかった。蝋燭の明かりは所々消えてしまっている部分もあったが、暗闇にある程度目が慣れていたので、沢に落ちるという心配も無く、この状況を楽しむ余裕も出始めていた。そして4人目のお化けの登場に期待していた。
「今度はどんな登場の仕方をするんだろう」
こんなことを話しながら歩いていたが、一向にお化けは現れない。前方を見上げれば、山陰にキャンプファイヤーの明かりで照らされた雲が、星の輝く夜空に不気味に見えた。

「お化け出ないね」
さすがに不思議に思って誰かが言い出した。もうキャンプ場の近くまで帰ってきたことは皆分かっていて、4人目のお化けがなかなか現れないので、逆に強気にさえなってきていた。

 キャンプ場の入り口が前方に見えたとき、そこにいた大学生が走り寄ってきた。
「お前たちどこに行ってたんだ!」
走りながらこう叫ばれて、一同立ち止まった。
「最終組がまだ来ないと、お化け役から連絡があったぞ」
何のことか分からなかった。
「お化けが3人しか出てこなかった」
と言うと、
「3人目のお化け役から、来ないと連絡があったんだ」
3人目といえば、沢向こうに立っていた女の人だ。
その時の状況を説明したら、
「沢を渡っては危ないので、向こう岸には誰もいないはずだ」
僕たちは急に怖くなった。何よりも一緒に歩いてきたお姉さんが、泣きながら状況説明してくれたが、そんなことはあり得ないというやり取りが続いた。

 暫くすると、後ろからお化けに扮した学生のグループが歩いてきた。お化けは5人いたが、内3人は見たことがない衣装だった。白い服を着た女の人はおらず、全員男の人だったのだ。
 僕たちは、蝋燭の道のとおり歩いてきた。道に迷うはずなどなかった。しかし、2人目までのお化け役は、僕たちが通過したことを証言したが、3人目以降は、何時まで経っても僕たちが通過せず、道に出て探したほどだったと言う。

 沢の向こうにいた女の影は、一体誰だったのか。僕たちはその夜、怖くて足を伸ばして眠れなかった。その後、山から帰っても数ヶ月、恐怖は払拭できないでいた。いや、ひょっとすると、今もまだ克服できていないかもしれない。あの女の睨む目を忘れられないからだ。
 あれが大学生のドッキリ企画だったらよかったのにと、今でも思っている。


     終











作品名:肝試し 作家名:亨利(ヘンリー)