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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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肝試し

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肝試し



 僕の町の近くの山に、ハイキングに適した山があった。小学生の遠足のコースにもなっていて、友達とはカブトムシやサワガニ獲りによく行った。
 4年生からは、夏休みに1泊2日のキャンプが、大学生サークルの引率のもと開催された。テントを自分たちで立てて、皆で作ったカレーライスを食べて、キャンプファイヤー。その後には、恒例の『肝試し』が開催されるのが、毎年の楽しみだった。

 6年の時の肝試しでの出来事だ。僕は9班の班長だった。通常の班の人数は男女4人ずつの8人だが、僕の班には、男子は3人しかいなかった。
 山中は本当に真っ暗で、トイレに行くのも懐中電灯を持って3〜4人のグループで行かないと、怖くて仕方ない。肝試しはキャンプファイヤーで歌って踊った後、山の暗闇に慣れた頃行われる。その頃には、ある程度テンションが上がっており、
「お化けなんか怖くない!」
と、皆が口々に叫んでいたのを覚えている。

肝試しのコースは、キャンプ場から1km程下った谷川の橋の上からスタートする。そのスタート地点までは、70人程の小学生が、大学生に連れられて降りていくのだが、道路のすぐ横が沢になっているので、落ちないように蝋燭が立てられていた。橋に着いて、来た道を振り返ると、所どころ、山の斜面の曲がりくねった道に、蝋燭の明かりが点々と灯っているのが見えた。そして少し空が明るくなっている所があった。それがキャンプファイヤーで照らされたキャンプ場のある場所だとわかった。

 肝試しの前に、ライトを完全に消した状態で怖い話を聞かされる。そうすると、今までまで強気だった子供たちは急に怖気付いて、泣き出す子も出てくるのだった。一通り話が終わると、4年生から一班ずつキャンプ場に向けて出発する。その途中でお化けに扮した大学生が、暗闇から脅かすという趣向だ。もし懐中電灯を点ければ、ギブアップのサインで、もう脅かされることはなくなる。

 自分たちの順番が来るまで、友達と話をして気を紛らわせていると、
「キャー!」
という叫び声が聞こえてきて、待っている子供たちの緊張はマックスになった。5分置きに次の班が出発していくのだが、山は複数の叫び声でいっぱいになっていた。僕の班は一番最後のグループだった。45分ほど待っただろうか、やっと自分たちの番が来たが、なかなかスタートさせてもらえなかった。人数が一人足りないからなのか、トランシーバーで連絡のやり取りが行われていたが、僕らはそんなことは気にもせず、スタートに向けて気合を入れていた。結局、最後までスタート地点に残っていた大学生のお姉さんが、一緒に歩いてくれることになり、最終組はスタートした。

 しばらく歩くと、道路の左側の斜面から、お化け役が飛び降りて来て、皆絶叫した。大学生のお姉さんも大声で叫んでいた。僕らは少し早足になり、先に進んだ。大学生が化けているのは分かっていたが、何時どこから飛び出してくるのか、暗闇の中では僕もとても怖かった。シーンと静まり返ると、横に流れる沢の音と虫の声だけが聞こえてきた。この静寂が続くも、先を行く班の子の叫び声で我に返り、次のお化けの登場に備え、身体を硬直させた。

 二人目のお化けが後ろから追っかけてきた。走ってはいけないルールだったが、皆走り出した。すぐにお化けは山の斜面の草むらに入って、追跡は終わった。子供たちに、この状況でルールを守れと言っても、それは不可能。少し早歩きで震えながら、坂道を蝋燭の見える道のとおり上っていった。すでに大学生のお姉さんは泣いていた。
作品名:肝試し 作家名:亨利(ヘンリー)