きみの誕生日に僕はひとつの恋をする
だって、
今日は きみの誕生日だから。
きみに会う時間よりもずっと早く家を出る。あと数回で支払いの完了する愛車に乗り込む。
ブルーパールのボディは、落ち着いたイメージに見られるようだが、まあ好きに理由は要らないと思っている。
向かうのは、きみへの贈りものを買う店。どこにしようかと昨夜考えて、大型ショッピングモールに入ったアウトレットの店にしようと決めた。
以前「えーっ、前もって買っておくんじゃないのぉ?」と友だちの彼女に言われたことがあったけど、ずっと持っているなんて僕はできない。それに買いたいものというか、贈りたいものが当日まで同じとは思わないかもしれない。ほんの数日でそれを彼女が買ってしまったら 嬉しさは半減するか もしくは儀礼的な喜びになってしまうかもしれない。
今日の気持ちで贈りたい。それって可笑しいだろうか。
きみの誕生した素晴らしい日に ふさわしい演出をしたい。
もしも、急なできごとで買いそびれてしまったとしても 道端の綺麗な花をキミに届けよう。それをきみが喜んでくれるなら 僕はきみの欲しいものを手に入れる努力を惜しまない。
きみの為より僕の自己満足が勝っているように思うだろうか。
たとえそうみえても、僕がきみのことを想う気持ちは、自分のことを思うよりも勝っていると思っている。もともと形のないものを 形として見せるのだから その時が大切じゃないか。
そのひと品を選ぶ僕は その時 恋をするんだ。
僕が恋するきみにふさわしいものに恋をして贈りたい。
可愛い包装紙。似合っているリボン。
でも それは装飾。
本当の贈りものは、その中身だ。
想う心もそうじゃないのかな。
雨がやんだ。
雲が切れてきたけれど、まだお陽さまは全貌を見せてはくれない。
時計が 待ち合わせの時刻を差すまで あと……
さあ、きみと太陽。どちらが先に晴れた笑顔を見せるかな。
止まらない時間(とき)
移ろう気持ち
留まりたい想い
――きみの誕生日に 僕はひとつの恋をする。
― 了 ―
作品名:きみの誕生日に僕はひとつの恋をする 作家名:甜茶