目黒さんの心霊的事件簿ファイル
「梅雨だな目白くん、とてもじめじめしていて何もしたくないよ」
「働いてください目黒さん。貴女生徒会長でしょう」
「あーうんそうなんだけど」
「なんですか」
そう歯切れ悪く言うものだから、説教はそっちのけで耳を傾けてしまった。
目黒さんは生徒会室の生徒会長の机から資料を引き出しから出して机の上に置いた。
これを、見ろってことなんだろうけど赤字で大きく「関係者以外閲覧厳禁」と書かれている。
「…これ、僕が見てもいいんですか」
「だって君は私の関係者なのだから閲覧厳禁も何もないだろう。それに君はこの事を口出ししないだろうしな」
ごもっともです。見た、というのをうっかり零してしまったら何がおこるか…考えただけでも恐ろしい。
恐る恐る資料を持って一枚一枚めくると、そこには本当に僕が見てもいいのか怪しい数字、文字が書かれている。
「…えっと…これ、本当に僕見ても良かったんですか?」
「君の言いたいことは察してあるから心配するな。それともなんだ、他の心配事でも?」
「ありまくりで何から話せばいいんでしょうかねこれ」
僕は資料を丁寧に生徒会長の机に置いた。
「大体、どうして花壇から血が流れるんですか」
間を置いて目黒さんは口を開いた。
「それなんだがな、さっぱりなんだ珍しく」
「誰かに見間違いじゃないんですか?土が赤く見えただけで血と勘違いとか」
「うちの学校は土は全部黒いよ、それに赤土だとしてもどんな馬鹿だ」
「じゃあ、血の赤黒いのを勘違いしたとか!」
「…目白くん、普通血は赤なんだ」
「確かに、血液は酸素に触れると赤くなりますが」
「流れている、という時点でもう酸素に触れていることは確定だ。回りが真空状態ということなんてありえない」
目黒さんは机に置かれた資料を引き出しにしまい、鍵をかけた。
「しかし、あえりえない事をありえないと証明するのが私達の役目だよ目白くん」
いつもと変わらぬ真面目な顔で言われてしまえば僕は何も言い返せない。
そのことを目黒さんは知っているからこそ、ズルイ、とさえ僕は感じてしまうのだ。
「ところで目白くん、物は頼みなんだが」
ああ、今度は一体どんな無理難題を押し付けられるのだろうか。
「君のクラスメイトや知人達に、何でもいいから花壇にまつわることを聞いてきてくれないか?」
案外普通だった。
作品名:目黒さんの心霊的事件簿ファイル 作家名:むいこ