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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「時のいたずら」 最終話

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「ならないよ。それに子供を産んだらそんなこと言ってられないぞ。母親だからな。今日の話はこれで終わりにしよう。俺たちだけの秘密だ」

「母親ですか、優斗さんの子供が早く産みたいです」

「うん、京都で生活を始めたらすぐに作ろう。母もきっと喜んでくれるよ」

二人の心の底にあった疑問は前向きに解消された。
これからは家族と言う現実が忌まわしい過去と入れ替わる。
暗闇で藤が見た明かりは最後の希望に見えていたが、今は自分の生きる意味と自分のことを大切に思ってくれる優斗への感謝の明かりに変わっていた。

夜の帳が下りて、二人の間にいよいよその時が来た。
静かに目を閉じて藤は優斗を待っていた。

ここへ来る道中に車の中で手を握られながら頭の中をかすめていた今夜のことは現実となってゆく。
前にアパートの浴室で手に触れて無理と感じた優斗の男性が自分の中にゆっくりと入ってきたとき、なぜか歓びの声を出すのではなく、泣けてきた。
優斗は痛いのかと勘違いしてそれを抜いた。

「痛いのか・・・ゴメンな」

「いいえ、違います。優斗さんと一つになれた嬉しさで泣けてしまいました」

「そうだったのか・・・おれは嬉しいよ」

「幸せです。もう大丈夫です・・・」

それは気持ちよくしてください、と言う響きに優斗には聞こえた。
再び深く挿入されたその時から藤は我を忘れて優斗にしがみついて、一度そして二度と訪れる絶頂感に酔いしれていた。

18歳とは思えないそれは女の姿だった。
その日優斗は二度目を求め、藤の妊娠へと結びついていた。
養子縁組を済ませて目出度く二人は入籍を済ませ、翌年母親に見守られながら藤は可愛い男の子を出産した。

もうどこからやってきたのかなどと言う気持ちは薄れていた。
優斗との幸せな日々が自然と周りに溶け込んで行く藤の姿がそこにあった。


「時のいたずら」 終わり。