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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「時のいたずら」 第十話

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「どうしたの?」

「いえ、嬉しくて涙が出ました」

「そう、喜んでもらえて私も嬉しい。私は優斗の前に女の子を生んだんだけど、幼い頃に病気で亡くしたの。あなたがお嫁さんに来てくれたらその子の生まれ変わりだと思って仲良くしたいって、涙を見て感じたわ」

「藤は幸せ者です。優斗さんも優しいですし、お母様もお美しいだけでなくそのようなお気持ちでいらしてくださるなんて・・・」

「まあ、美しいだなんて、夫にも言われたことが無いわ。若いって素敵よね。自分の気持ちが素直に言える。優斗はああ見えて心優しい子だからあなたには頼りないって感じることがあるでしょうけど、助けてやってね。母親って息子は可愛いのよ、幾つになっても」

「はい、十分お気持ちはわかります。わたくしのような役に立たない女でも優斗さんが好いてくださる間はどのようなことでもいたしたいと誓っております」

「あなたは前に行ったけど優斗には過ぎるお相手よ。少し自分のことも遠慮せずに楽しんで暮らさないと疲れてしまうわよ。時々わたしとお出掛けでもしましょう」

「本当ですか?お母様とでしたらどちらへでも着いて参ります。楽しみが一つ出来ました」

「うん、そうしましょう」

香子は藤が自分の本当の娘になってくれることが心から嬉しかった。
翌朝優斗は藤を伴って名古屋に戻り勤務先の派遣会社へ辞表を出し、住んでいるアパートの賃貸契約を解約した。
引っ越しのために大型のワゴン車をレンタルして実家との間を往復して、最後の夜をがらんとしたアパートで迎えていた。

「何にもなくなっちゃったなあ~もともと少なかったけどこうして見るとなんだかんだと物があったなあ~って感じるよ」

「ええ、ちょっと疲れましたね。今夜は早く寝て疲れを取ってください」

「そうだな。なあ、藤。考えたんだけど実家に行くと家の仕事手伝うからしばらくは二人きりで遊びに出かけたり出来ないって思うから、明日から泊りで旅行に行こうか。そのあとで家に帰ればいいから」

「ご無理なさらなくても宜しいですよ。わたくしは今のままで十分です。お母様とも楽しくお話しできますし」

「ならいいんだけど、二人だけの夜を楽しみたいと思ったんだ。ほら、続き?してないだろう」

「恥ずかしいことを・・・優斗さんが望まれる通りで藤はついて参ります」

藤は優斗が言ったあの時の言葉をまだ覚えていた。