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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ノベリストあるある小説

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ミチルは人の少ないバーにやってきた。

「登場キャラはおしゃれなバーでお酒をのみがち」

ミチルはカクテルに入った酒を傾ける。
その哀愁漂う後ろ姿に引かれて、ユウヤがやってきた。

「高校卒業してからもう10年か……。
 サトシは今頃なにやっているのかな」

「だいたい三角関係になりがち」

ミチルはそれだけ答えた。

10年前、3人は同じ高校の同級生だった。
仲良し三人組として何をするでも一緒だった。
そして、間もなくサトシとミチルは付き合うことになり……。

サトシは不慮の事故で無くなった。

「恋人(夫も含)を殺しがち……」

「ミチル、なに飲んでいるんだ?」

ユウヤはミチルの飲んでいる
オレンジ色で店内の光をきらりと反射させるグラスを指さした。

「……なぜか食べ物の描写が凝りがち」

「マスター。同じものを」

ユウヤの下に酒が出されると、
過去の思いを洗い流すようにハイペースで飲んでいく。

サトシの死後、残された二人の関係はぎくしゃくしていく。
ミチルはもちろん、同級生の誰とも接点を持たなくなっていった。

それどころか、同級生の着崩した制服やら
下品なピアスやら腰パンやらを見ていると吐き気がした。

ユウヤは制服もきちんと着て宿題も忘れたことはないし、
授業もさぼったことはない優良学生だった。

「不良系の人を見下しがち」

ユウヤもひとりごちた。

「それで、ミチルは今どうしてるんだ?」

「今じゃ普通のシングルマザーよ」

「そうだった。だいたい子持ちになりがちだった」

「でも、満たされない日々を送りがち」

二人は同窓会で再会した帰りだというのに、
まるで10年前を思い出すかのような息ぴったりのかけあいを見せた。

「なあ、ミチル。
 また昔みたいに詩を聞かせてくれよ」

「わかったわ」



きみは愛の何をしっているの。
私は恋のなにをしっているの。

わからない。

でもその言葉には愛がある。

意味なんかなくてもいい。


ただ手を重ねるだけで伝わる。
あたたかな体温。

これが愛なんだと思うから。

それが嘘だとしても。




「……愛とか恋とか人生とかを詩にしがち」

「ふふ、ミチルは変わらないんだな」

ユウヤはそっと手を伸ばす。
バーカウンターに乗せられたミチルの手に重ねる。

「ホテル行こうか」

「すぐにホテルに行きがち」

二人はホテルに向かった。



二人は恋人のように、
お互いの寂しさを埋めるように激しく愛し合った。

「前からミチルのことが好きだったんだ」

「エッチな展開になりがちーー!」

ミチルはユウヤを受け入れてベッドの中で静かに眠った。
目を覚ますとユウヤはすでにチェックアウトしていた。

「……エッチの後の展開はわりとあっさりしがち」

ミチルはもの寂しさを感じつつ着替えを済ませた。
ホテルのラウンジに行って鍵を返すと。

「あの、お客様。
 お連れの人からお預かりしていたものがございます」

「え?」

受け付けは棚から小箱を渡した。

「お連れの方が、あなたに渡してほしいと」

小箱の中にはダイヤモンドの指輪が入っていた。
それを見た瞬間、ミチルの目は涙があふれた。

「終盤でプロポーズしがち……!」

ミチルはそっと指輪を受け取った。




そのとき、刃物を持ったホッケーマスクの殺人鬼が入って来た。

「フハハハハハ! みんなぶっ殺してやる!」

「きゃーー!」

殺人鬼はひとしきり登場人物を殺すと、
満足そうにして帰っていった。


「最後の最後で強引な展開に……しがち……がくっ」