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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「時のいたずら」 第九話

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「父さん、そうだよ。藤はボクが知り合った時意識が無かったんだ。理由は解らないけどボクが警備をしていて見つけた。目が覚めたときに自分の名前が藤であるということ以外には記憶が無くなっていたようで、時々変な事を口走るから先祖返りでも起こしたのかと思うんだ。体は健康なので問題が無いからボクが引き取って世話をしたいと今に至っている」

「そんなことがあったのか。お見かけしたところ普通の可愛いお嬢さんにしか見えないけど、優斗が今は頼りだということなんだな?」

「お父様、厚かましく優斗さんにお願いして暮らしております。この先お許しが頂けるのでしたら、一生をかけてお返ししたいと心に決めております」

「優斗のことを好きでいてくれているということだね。息子は若い時からこんな風貌で彼女が出来なかったから私としては心からあなたみたいな可愛い人がお嫁さんになってくれたら嬉しいと思うよ。母さんもきっと賛成だよ、なあ?」

香子はニコッと笑って頷いた。

「なあ、父さん。名古屋では恥ずかしいけど苦しいからやっていけないので、引きはらってこっちに住んでもいいかな?店手伝うよ」

「やっとその気になったのか。店をやるということは簡単じゃないぞ」

「わかっているよ。それに藤も手伝わせるよ。世間に出れば少しは気も晴れるだろうし」

「それはお前が決めることじゃないだろう。藤さんの意向もあるだろうし」

母親の香子が口を挟む。

「ねえ、藤さん。きっとお名前が藤なのよね。優斗と結婚したら杉村藤ってなるから京都では素敵な名前だと感じられるわ」

「お母様、ありがとうございます。もったいのうございます」

「あなたのその言葉遣いと物腰はお店ではぴったりだって感じる。ねえ、あなた?」

「ああ、そうだな。どこか奥ゆかしさを感じさせるなあ。優斗そうしろ」

父親のこの一言で許しが出た。さっそく帰って住まいを引き払って戻ってくると優斗は両親に話した。
今夜は母親が話したいことがあるからと藤は一緒に寝ることになった。
結婚前なので同じ部屋で寝ることは親の前では憚られたからだ。

優斗の母親は嫁ぐ前の自分の気持ちを藤に話した。
自分がここに来た時は夫の両親はまだ健在で昔気質の人だったのでいろいろと難しいことを注文されたと笑った。
中でも朝晩仏壇に手を合わせて経を読むことは大変だったと言った。