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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「時のいたずら」 第九話

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京都市北区堀川通北大路下る、に紫式部の墓は存在する。
線香を忘れたので手を合わせるだけにした。藤は何やらつぶやいていたがそれはどうやら天台宗のお経らしい。

「お経を唱えているのか?」

「はい、天台様のご加護にすがろうかと思いました」

「良いことだ。藤は今の女には出来ないことがたくさんあるな」

「わたくしなど経を唱えることぐらいしか出来ません」

「十分すぎる。それに美人だ」

「優斗さん・・・このような場所でそのようなこと言われましてはお恥ずかしゅうございます」

「そういう所もますます可愛いぞ。そう言えば、例の続きをまだしてなかったな?思い出したぞ、ハハハ~」

「なんという人目があろう場所で・・・」

藤は通りすがりの人目を気にしていた。
年頃の男は必ずと言っていいほど藤をチラ見してゆく。美女と野獣の組み合わせに笑われているのだろうか優斗には気になる。自分に彼女が出来なかったことはその風貌にも関係すると思っていた。
あの日、藤が自分を求めてきたとき一瞬もし付き合えたらと言う思いがよぎっていなかったら、今は無かったであろう。

優斗のスマホが鳴った。

「はい、何母さん?」

「どこに居るの?お父さん帰って来たわよ」

「じゃあすぐに戻るよ。北大路だから直ぐだよ」

「わかった。じゃあ。藤、父さんが帰ってきたから戻ろう。前に話したようにしろよ。聞かれたら思い出せないというんだ」

「優斗さん、少し不安です。大丈夫でしょうか?」

「心配するな。俺だって子供じゃないんだ。自分が決めたことを報告するだけ。父や母が反対しても考えは変わらないよ」

「はい、よろしくお願いします」

夕飯を囲んで藤は優斗の隣に正座して両親と対面した。

「優斗の父親で義徳(よしのり)と言います。名前は藤さんと言うのですね?」

「お父様、初めまして。藤と言います。よろしくお願い申し上げます」

「そのような丁寧な言葉遣いは無用だよ。私は息子から何も聞いていないので驚いているんだ。まず二人は正式に交際していて結婚を前提としているということでいいのかな?」

優斗は答える。