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蛍舞う

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この何とも和める蛍だが、成虫になると長くて10日ほどしか生きられず、その間口にするのは水だけだと言う。
一生の最後の10日間、命の源の水のみでそれまで貯めたエネルギーを全て次の世代へ受け継ぐパートナーを探すために使い光舞う。なんと儚い光の舞だろう。
蛍の羽ばたきの下へそっと手の甲を差し出すとうぶ毛を揺らす微かに柔らかい空気の振動を感じることが出来る、多くの人は手で掴み捉えようとするが、そうするとこの感触は得られない。またその光は優しく
ほのかのようで実は明るく遠くから認識出来る程強い。しかし熱はない不思議な光。音も無く飛ぶのは昆虫でも珍しい。無音が故魅力もある。
それらを眺め心動かされるのはやはり最後の力の限り舞うエネルギーの叫びからか。


見方を変えれば出会い系サイトのように暗黒に出会いを求める男女もまた蛍か?
あるものは伴侶を求め、あるものは不倫相手を求め、またある者は金を求め業者の狩りに捕まり
雄と雌が液晶パネルの光に誘われ寄ってくる。
夜中でも消えることない人工の光や溢れる騒音、そして人、人、人
蛍の光を見ることもなく育つ若者に年老いて魂が回帰する場所があるのだろうか?
宇宙に物差しを当てる時、舞う蛍10日も人間の人生80年も何の意味も成さない刹那の一瞬でしかない。
また蛍の命人の命も星の命も同様である。

今宵も蛍が乱舞する、残された命を燃やしながら

今宵も蛍が舞う。

作品名:蛍舞う 作家名:のすひろ