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樹困 奨弛
樹困 奨弛
novelistID. 59814
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奇妙劇 薩長同盟

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  西郷立ち上がって出ていこうとし、振り返って小松のほうを見る。

西郷 「…………」

  西郷そのまま元の位置に戻る。

西郷 「おーい! 誰かいるかー!」

  謎の女登場。

謎  「ここに」

西郷 「来てくださった方に、ご馳走をふるまって差し上げるでごわす。勘定はこちらが持つ故」

謎  「かしこまりました」

  謎の女退場。

西郷 「本当にこれでうまくいくのか……」

  舞台数瞬暗転

  坂本が駆け込んでくる。手には台本。

坂本 「西郷さん! 話し合いが進んでないってどういうことぜよ」

西郷 「向こうからこちらに願い出るのを待ってるのでごわす」

坂本 「あなたの考えもわかりますが、ここはどうか相手のことも考えて、あなたから話を切り出すぜよ」

西郷 「し、しかし……」

坂本 「いいから、来るぜよ」

  坂本、西郷を引っ張って退場。小松ついてくる。

  舞台暗転

  桂と向かい合って座る西郷。西郷の後ろに小松。真ん中に坂本。

  舞台明るく

坂本 「さあ、西郷さん」

西郷 「話があるなら申すでごわす。桂殿」

桂  「桂じゃないです。木戸寛治です」

西郷 「話があるなら申すでごわす。木戸殿」

桂  「長州と薩摩で手を組みましょう」

西郷 「断るでごわす」

桂  「え! 話が違うじゃないですか。坂本さん」

坂本 「自分に言われても困るぜよ」

西郷 「積年の怨みにそう簡単になくなるものじゃないでごわす」

桂  「それはわかっていますが」

坂本 「藩のことばかり考えている場合ではありません! 国のことも考えてください!」

西郷 「…………」

桂  「私だって藩の代表。あなたも藩の代表。だが、それと同時にこの国の民として、考えることがあるでしょう」

西郷 「…………」

坂本 「力が必要なんだ。この国を守るために!」

西郷 「……おいどんは……」

坂本 「西郷さん!」

桂  「西郷さん!」

西郷 「坂本殿、桂殿」

桂  「木戸寛治です」

西郷 「木戸殿。おいどんは……やはり、承諾しかねる」

桂  「…………」

坂本 「双方、夜までゆっくり考えるぜよ」

桂  「そうですね」

西郷 「ごわす」

小松 「その必要はない」

  小松やおら立ち上がる

西郷 「こ、小松」

小松 「桂さん」

桂  「木戸寛治です」

小松 「木戸さん。この密約は倒幕のためには欠かせません。だから、本人と話さなくてはならないのです」

  小松以外全員驚く

坂本 「小松さん、いったいあなたは?」

小松 「西郷様の執事をやっております。小松帯刀です。以後お見知りおきを」

  小松深く礼をする

坂本 「し、執事……」

小松 「付き人といったほうがいいでしょうか。この時代の人には」

西郷 「こ、小松」

桂  「小松さん、あなたも別の時代から来たのですか?」

小松 「も? どういうことですか? 我々以外にもそのような人がいるというのですか」

坂本 「自分とここにいる幾松さんはそうです」

小松 「そうでしたか。それなら話が早いです。歴史の流れを変えるわけにはいきません。協力してください」

桂  「もちろんです」

小松 「坊ちゃんも今しばらく頑張ってください」

西郷 「今更そんな呼び方はよせ」

坂本 「ところで、なぜわざわざ犬の真似など」

小松 「時は幕末、いつどこから坊ちゃんの命を狙う輩が現れるかわかりませんから、常に近くで見守っておりませんと」

坂本 「いや、別に犬じゃなくても」

小松 「付き人だと、いざというときについていけなかったりするんですよ」

坂本 「よくやりますね……」

小松 「執事たるもの、これくらいのことができなくてどうします」

桂  「それでどうするですか?」

小松 「まずは、扉の奥の彼に出てきてもらいましょう」

  中岡登場

中岡 「ずっとスタンバってました」

小松 「あなたも違う時代から来た人ですか?」

中岡 「まあな」

小松 「歴史についての知識は?」

中岡 「誰にも負けないと思っている」

小松 「ならばあなたが指示を出すほうがいいでしょう。頼みますよ」

中岡 「わかった。じゃあ、みんな聞いてくれ」

  話しながら舞台数瞬暗転。中岡、桂、坂本、西郷、小松の順で並ぶ。

中岡 「じゃあ、木戸さん」

桂  「桂小五郎です、じゃなかった木戸であってます」

中岡 「決め台詞どうぞ」

桂  「たとえ長州が滅びても、薩摩が朝廷のために尽くしてくれるのならば、天下の幸である」

中岡 「じゃあ、西郷さん」

西郷 「その覚悟たるや、見事でごわす」

中岡 「坂本さん、締めて」

坂本 「これにて、薩長同盟成立」

  テンポよく

  舞台暗転

 小松の館(夜)

  舞台明るく

  西郷と小松がいる

西郷 「なあ、本当にこれでよかったと思うか」

小松 「坊ちゃんはどう思われるのですか」

西郷 「認めたくはないものだな、若さゆえの過ちというものは」

小松 「左様でございますか」

西郷 「僕は、ぼくは……」

小松 「もう、寝ましょう。明日は早いですから」

西郷 「ああ。そうだな」

  舞台暗転

 寺田屋(夜)

  舞台明るく

  坂本、中岡、土方が座って宴会

坂本 「中岡さんのおかげで万事解決ですね」

中岡 「いやいや、皆さんの協力があったからこそですよ」

土方 「これでもうあたしの役目は終わりよね?」

中岡 「役目?」

土方 「そうよ。だってあたしは坂本龍馬殺した責任を取るために協力してたんだからね」

中岡 「確かにそうだが……」

土方 「魔法使いさ〜ん。元の時代にもどして〜」

  謎の女登場

謎  「いいのですね。徳川さん」

土方 「うん。もう戻る」

謎  「では、いきますよ」

土方 「待って! 別れの挨拶だけさせて」

謎  「なるべく、手短に」

  土方、坂本と中岡のほうを見る

土方 「なんだかんだで楽しかったよ。元気でね」

坂本 「達者でな。土方さん」

中岡 「のんびり生きろよ、土方さん」

土方 「これからは、土方じゃなくて、徳川喜子よ」

  舞台暗転

  土方と謎の女退場

  舞台明るく

  周りを見渡す二人

坂本 「本当にいなくなりましたね」

中岡 「そうだな」

坂本 「我々はこれからどうなるのでしょうか」

中岡 「わからぬ」

坂本 「史実通りに暗殺されるんですかね」

中岡 「暗殺される場所はわかってる。そこに行かないことだってできる……」

坂本 「中岡さん……」

  FiN


作品名:奇妙劇 薩長同盟 作家名:樹困 奨弛