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かいなに擁かれて~あるピアニストの物語~

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あれから七年――、決して裕福などではないけれど、何とか独りの生活を維持できるようにまでなった。友人や音楽仲間、みんなのお陰だ。感謝。そして、父母に――感謝。

魅華は、音楽仲間のコンサートやリサイタルにピアノ奏者として幾度も共演した。
けれど、自身でソロのコンサートを主宰したことはまだ一度として無かった。
明日も友人のヴァイオリンのリサイタルで伴奏することになっている。
気持ちは友情の占める方が多い。だけど、生活の為だ。

ソロコンサート。
無名のピアニストである自分が主宰しコンサートを開催するとなると意味は全く違う。自分の集大成としてのピアノを発表する場を創り出すということなのだから。
重い焦りが魅華を覆う。
ピアニストとして年齢的にも既に自分の限界を感じ始めているからだ。
いや――年齢でない。最近、ふと自分で満足できるような指の動きが出来ないと違和感を感じ取るときがあるのだ。その変化は恐らく相当なレベルの音楽家でも気づくことは難しいほどの極微細なものにしか過ぎなかった。
しかし、そのことが魅華を焦らせていた。
魅華は自分の両手をじっと見つめた。
綺麗に飾った爪なんてない。
短く切り整えられた爪。ピアノを弾くための――手だ。
「よく頑張る手だね」と魅華は、自分に云ってみた。
今こうやってオンナ独りで歩いてゆけるのは、友人たちや音楽仲間、みんなのお陰だ。感謝。そして、父母に――感謝。
その思いがあるからこそ魅華は強く想う。
ワタシのピアノ――集大成としてのソロコンサートを開催しなければと。
強く想った時だった。
何かがパチンと音をたてた。
そして確信したのだった。「あ、明日――、出逢ってしまう」
その確信は、翌日、現実の事となった。

 次章へつづく