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ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~

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 試験終了直後ゲーム再開、12月の半ば。
 今回受けたのは採取『亀山の宝樹』と言うクエストだった。
 依頼主は愛妻家の貴族の夫で、最愛の妻の誕生日に必ず幸せになれる言う『幸運石』で作られた指輪をプレゼントしたいらしい。
 北の山脈に棲むと言うギガン・トータスの背中に茂っている密林の中に1本だけ生えている『宝樹』が年に一度だけ幸運石を実らせていると言う。

 このモンスターは基本的戦う力は無い…… と言うか戦いようが無かった。
 何しろ足の直径だけでも軽く1万メートルは越えていて、巨大な足が岩山を潰すとその辺りに巨大な足跡を残した。
 時々ズシン、ズシンと揺れる山道を私達は駆けあがって行った。
 勿論ただで済む訳が無かった。
 このギガン・トータスの背中の密林にも様々な生態系を持つモンスターが棲息していた。
 特にヤバいのはこいつだった。
「うひやああっ!」
 アルネが悲鳴を上げて屈んだ。
 途端アルネの背後の木々が切断された。
 アルネは恐る恐る目の前のモンスターを見た。
 全身が黒光りする外殻に包まれた逆三角形の胴体、鋭い牙の並んだ円盤状の口、その中から赤い爬虫類の様な瞳がギラつき、左右から先端が2本の爪の生えた肥大した腕、1本1本が刃の様に鋭く先端の尖った太くて長い金属を繋げた様な4本の節足が全身を支えていた。
 これがこのクエストのボス『アーマー・インセクト』だった。
 このアーマー・インセクトを倒さない限り幸運石は手に入らなかった。
「シェイクッ!」
 ローネはシェイクを唱えた。
 半月型の衝撃波はモンスターにぶつかって爆発する。
 でも敵の装甲に弾き返され、アーマー・インセクトは無傷だった。
 なら魔法が効かないなら物理攻撃だ。
「気合い斬りっ!」
「スラッシュ・ファングッ!」
 私の鋼の剣とテリオの二丁ダガーが輝いた。
 でもガキンッと言う金属音と供に私達の攻撃は弾き返された。
『ガアアッ!』
 アーマー・インセクトは無数の節足を巧みに操って体を捻ると私とテリオを薙ぎ払った。
「うわあっ!」
「くううっ!」
 私達は遠くの方に吹っ飛ばされる、だけどそれは伏線だった。
 でも幸いにアルネを助ける事ができた。
 アーマー・インセクトが私達に気を取られている間にアルネはそこから駆けだして私達の所にやって来た。
「エビの分際で人間様を食べようなんて生意気っス! あんな奴とっとと炒飯にしてやるっス〜っ!」
「いや、あんまり美味くなさそうだぞ?」
「何言ってるっスか? エビも蟹も虫も同じ仲間っス、同じ甲殻類ッス!」
「甲殻類じゃないでしょ、節足動物ではあるけど」
 私は言った。
 同時にエビや蟹の代わりにこのモンスターが入ってる炒飯を思い浮かて気分が悪くなった。
 しばらく炒飯食べられそうにない…… 幸いこれがゲームだって事に感謝した。
 冗談はさておき、今はこのモンスターをどうするかだ。
 さっき私の攻撃が防がれたと言う事は弱点は目玉で間違い無い、だけど問題はどうやって攻撃をするかだった。
「ま、地道に部位破壊でもする?」
 私は皆に尋ねる。 
 こう言った敵には倒し方のパターンがある、それは全員の攻撃を一点集中して奴の外装を破壊する事だった。
「いや、速攻で決める」
「ル、ルキノ?」
 私はルキノを見た。
 ルキノは美少女物のアニメの女の子が決してしてはいけない顔になって両手を鳴らしていた。
「こちとら冬コミの準備で忙しいんだ。こんな所で時間とってられるか!」
(うわぁ……)
 マジギレのルキノに私は引いた。
 連日徹夜でネームを直していたらしく、数日前から機嫌が悪かった。
 ルキノ(望)から出るオーラの責で私達はおろか教師達さえ近づく事が出来なかった。
 本当は今日はルキノを休ませようかと思ったのだけど、ルキノはゲームに参加した。
 確かにスランプの状態でやっても成果があるなんて思わないし、少しでも気晴らしになるならそれで良いと皆で話し合った。
「覚悟しろ虫野郎! 念仏はあの世で唱えやがれぇ―――っ!」
 ルキノは飛びかかった。
 狙いは勿論弱点の目玉だった。
 するとアーマー・インセクトは口を閉じて防御しようとした。
 しかしその時、ルキノはスキルを発動させた。
「スキル発動!」
 ルキノは鋭い目を見開いた。
 途端ルキノの姿が消えて無くなると一瞬にアーマー・インセクトとの間合いを詰めた。
 これはアクセル・スキルと言う物で、防御力を大幅に削る事で確実に先制攻撃を出せると言う物だった
 スキル発動後、ルキノは技コマンドを選択して攻撃を放った。
「正・拳・突きぃぃ―――っ!」
 渾身の力を込めた拳が唸る。
 肘から拳までを覆う手甲に鋭い3本の鉤爪が装着された鋼鉄の爪がアーマー・インセクトの顔面をぶち抜いた。
『ギャアアアア―――ッ!』
 案の定モンスターの弱点は目玉だった。
 アーマー・インセクトは大聞く地面に転がると蜘蛛の様に足を丸めて動かなくなった。
 ルキノはビシっと人差し指を向けながらアーマー・インセクトに言った。
「同人作家を舐めるな!」
(同人作家、おっかねぇ)
 私は思った。
 そう思っているとアーマー・インセクトは画面から消滅した。 
 その後私達は山亀の頂上にあった黄金の大樹に生っている幸運石を回収してクエストは終了した。
 なお、ルキノはこの後直ぐにログアウトして同人活動に戻ったのは言うまでも無かった。