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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「背徳の恋愛」 初めての不倫 第一話

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年齢も近く、話も合う。唄う歌の趣味も似ていてカラオケでも話が弾む。
四月が来て夫が東京へ最後の転勤をした。
目覚めて夫が居ない朝が何となく寂しく感じられたが、大学から帰ってきた娘と気楽に夜の外出も出来るようになって楽しさの方が勝っていた。

カラオケ教室はその第一週の水曜日から始まっていた。
新しい歌をレッスンしてもらって覚えた新曲をレッスン仲間とその日の午後からカラオケボックスで復習の意味で歌う。ランチをして、歌を唄って、お話をして一日が終わる。
和子にとってそれは楽しみの時間へと変わってゆく。
週末に東京から帰ってくる夫との土曜日の夜はやがて憂鬱な時間へと変化して、ついにその口から言ってはいけない言葉を出してしまうのだった。

「あなた、この頃更年期なのか濡れなくなって痛いの。ごめんなさい。毎週は気が重いのよ。お判りになって・・・」

「和子、おれたちは夫婦だ。するのが妻の義務だぞ。結婚してずっと俺は仕事をしてお前や子供たちに不自由はさせてなかったはずだ。違うか?」

「ええ、それは感謝していますよ。私も家事をサボったこともないし、あなたの言われることは何でも聞いてきたつもりよ。お互いにこの年齢になって少しは自分のことがしたいって考えるのはわがままなの?」

「おまえが俺のいない時間に何をしていても気にならないけど、こうして家に居る時は妻として振る舞って欲しい。東京で一人暮らしをしていて、帰って来てこの時間が楽しみなんだ。いけない事か?」

「男の人の気持ちが解らないでもありませんが、女の気持ちもお判りになって頂きたいって思うの」

「それはわがままだぞ。好きなことしたいのなら自分で稼いで暮らせてからそうしろ」

「あなた・・・そうすると言ったらお許しになるの?」

「なに!そんな甘い事じゃないぞ。いい加減にしろ。今日はいいけど、今度断ったらおれは考えるからな」

そう言い放つと自分の部屋へ戻っていった。
悲しくなった。あんな言われ方をしたことを。もっと普通に話して優しく出来なかったのだろうかといまさらに夫の本性を垣間見たようで涙が出てきた。
この日は眠れなかったので深夜に一人台所でビールを飲んだ。
もうカラオケでの一日だけが和子のストレスを発散する貴重な時間となり始めていた。

そんな矢先訃報が入ってきた。
カラオケの先生が亡くなったのだ。
それは突然にそして絶望と共に和子の心を支配した。