蜜を運ぶ蝶
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浅木蝶子の自宅兼事務所に国税の調査が入った。脱税容疑である。同時に、売春防止法違反容疑で県警も令状を持ってきた。浅木は任意同行で警察署まで同行された。
「あんたは1回でいくら貰ってたんだ」
浅木への警察官の態度は横柄な感じであった。すでに売春行為を確証しているようであった。
「大人が同意の上、愛し合ったのですよ」
「そのあと、金を要求しただろう」
「そんなことはありません。バックが欲しいくらいは言ったかもしれませんが・・広木さんでしょう。訴えたのは、勘違いされたのよ」
「いかがわしい宗教では、全裸になって誘惑しているそうじゃないか」
「全裸は事実ですが、誘惑は意識改革としてです」
「あんたほどの美人が裸になれば、男なら、欲しくなるだろう。その、色仕掛けで宗教の方でも寄付金を集めているそうじゃないか」
「寄付金は集めています。やましいことはしていません」
「まぁ認めなければ、泊まってもらうことになる」
「今日は帰れますね」
「いいですよ。今度は逮捕になる覚悟で帰ってください」
「それから、クラブのぼったくりも情報はあるんだ」
浅木は兎に角警察署から開放されたかった。自分が罪人として扱われたことが悔しかった。広木は愛人契約を求めた3人の中の1人であった。50代の男盛り、毎月30万円の約束であった。NPOを立ち上げて間もないころなので、浅木は契約し、月に5,6度体を重ねた。1年ほど過ぎたころ、結婚を迫られた。浅木はそのつもりはなかったが愛人契約をした。広木は離婚したと言いだした。その証拠だと言い、戸籍謄本まで見せた。浅木は2年目の契約切れを待って広木と別れた。広木がストーカー行為をするようになったが、電話であったり、店に来て関係を迫ることで、断り続けていた。気の優しい広木の気持ちは浅木も分かっていたが、浅木は自分の夢を成し遂げたかった。広木を店への出入り禁止にした。広木が、警察に訴えると言いだし、すでに半年になっていた。浅木は広木を騙したつもりではなかったが、本気にさせてしまったのだろうかと後悔した。その後悔の気持ちが、アサギマダラとして飛ぶことは止めようと思う気持ちに変わりつつあった。