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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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繋ぎ合わせているのは誰の力…?!

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毎日毎日、のんびりのんびりと暮らしている日々の中、流れ流れてひろみ(本名)さんと知り合った。
そのひろみさんからたまに動物の写真が届く。
動物と言っても犬か馬の写真…、時に植物。
この前、ひろみさんへと贈ったポトスの写真も届いたり…。
贈った次の日からポトスの名前はポト(本名)ちゃんとなっていた。
なのでそのポトちゃんは今日も元気に生きているとの事。
そんなひろみさんからホームページのアドレスが届いた。
何をどうしろとそう細かく言って来ないので、少々困る私…。
まるでお母さんのようだ。
お母さんも説明なく話が進む…。
その時ばかりは普段使っていないこの脳みそもフル回転させられる。
というかフル回転させなかったら、お母さんが何故かいきなりキレるので、そうせざるを得ないという仕組みがある。
なので分からない話をさも分かったかのように話さなければいけないという仕組み…。
しかし、ひろみさんはそこは違う。
今のところ…は、キレてない…。
それで、そのホームページを開けて初めに馬が載っていた。
馬の名前はシーマ(本名)と言う。
写真と数十秒の動画があったような気がする。
内容は読まなかったけど、しばしその馬の写真をじっと見る。
あまり思いは聞こえなかった。
そして私はひろみさんへとメールをした。
『よく分かりませんが、この馬、どうも困ってるようですよ。』
と。
すぐに返事が来た。
『シーマ君はオスのお馬さんで、まだ二才なんです。まだお母さん馬が恋しい頃だと思います。』
と。
あらまぁ~、早くにお母さん馬から離すのは人間のエゴかねぇ~なんて思いながら、その日はそれで終わった。

それから次の日だったか、ひろみさんからシーマの動画が届いた。
何とも伝えようがない気持ちになった…。
伝わる事を全て伝える事は簡単だけど、その気持ちを知ってしまった人はどう思うだろう…。
そんな事を思うと一から十までは伝えられなくなる。
それは人が人に対して思う気持ち。
例えば、これを私がひろみさんへと伝えたならば、その事をシーマは知るだろう。
自分の気持ちを知ったのに、そこで終わったならば、シーマは悲しむだろう。
これは馬が人に対して思う気持ち。
そしてその悲しみを誰が気付いてくれるだろうか…。
そんな事まで考えてしまうから尚更私は言えなくなる。
私の心の中で葛藤が起こる。
私は想いを聞くことしか出来ない。
それ以上の力は何もないのだという事をこういう時にとても知る。
こんな事をひろみさんに伝えるべきかという事も悩む。
しかしそれを言ってしまえば、ひろみさんの性格なら、
『全て聞き、全て受け止めます。そしてシーマを助けたいと思います。』
と言うだろう。
そしてまた私は考える。
私には何が出来るのだろうかと…。
分からない…。
分からないから藻掻く。
そして藻掻く事にまた藻掻く。
たった馬一頭と思う人もいるだろう。
しかし自分がその馬の立場ならどう思われたいだろうか…。
人は立場が変われば考えも変わる。
そんな事を考えていてもシーマの事は何も進まない。
だから私はひろみさんに、
『聞いてしまうと辛くなりますよ。』
とメールした。
やっぱりひろみさんの返事は案の定だった。
『ビデオを見たときにすぐ感じました。このまま放っておく事はできませんね。知ってしまったから…。』
と。
どうメールに返事をしたものかと悩んでいたら、ゆきの(馬;本名)がいきなり登場して一緒に動画を見始めた。
こんな悩んでる時に申し訳ないけど、面白い状況。
私はひろみさんに、
『いきなりゆきのが現れて、暗くなってます。でも何か言いたそうです。』
と返したら、
『ゆきのが体験してきた事をシーマが体験してるんですよ。同じ事をされたんですね…。』
と返事が来たから、ゆきのがパッと顔をあげ、
『ママ、違うよ。』
と言った。
それをひろみさんへと伝えたら、
『何?!ゆきの!!』
と返事。
おそらくゆきのが暗くなったのは、私がひろみさんに伝えるかどうかを悩んでいたからゆきのはそうじゃないと言いたかったんだと思う。
私が勝手に二人に…、いや、一人と一頭に迷惑をかけていたようだ。
そしてゆきのは、
『ママ、この子ね助けて欲しいって言ってるよ。』
と言った。
『えらいね~、ゆきのは。人参代だね!!』
とひろみさんからゆきのへのメール。
私はこの時分かった。
ゆきのは馬の気持ちを私に通訳しているんだと…。
それをひろみさんへと伝えた。
『いろんな馬と話すときにゆきのが通訳としてもいるみたいです。自分一人の力じゃ出来ないということだと今思いました。』
と。
やっぱりダメだぁ~私…。
馬のお世話になるなんて…。
『そこが良いとこ!!』
とゆきのに言われそう…。
こうやって馬に救われるんだろうなぁ~。
救う側が救われる…情けない…。
自分、ガンバレ!!
そしてゆきのはひろみさんに、
『ママの為に頑張るよ~。ママ、ありがとう。馬たちを愛してくれて、ありがとう。』
と伝えた。
それに対してひろみさんはゆきのへ、
『ママこそありがとうだよ~。ママの所へ来てくれてありがとうね~。』
と伝えた。
この一人と一頭の心の繋がりの大きさ、愛を愛で返している無償の繋がりの大きさを見て、絶対にこの間には入れないと知った。
私も少しくらいはひろみさんのような出来た人間になれたらな~なんて、…ちょこっと思った。
そしてひろみさんにゆきののこの想いがたくさんたくさん届いているといいなぁ~と思った。

それから数週間後、ひろみさんと調教師の方はシーマのいる三重県の熊野へと向かった。
調教の仕方や馬への接し方、シーマのマッサージをする為向かった。
良い結果報告があればなぁ~なんて思いながら過ごしていた。
そんな中、初めてシーマが現れた。
何とも言えない顔…。
何か嫌な事でもあったか?!ひろみさんとはどうですか?!と伺ってみる。
何か伝えてるんだろうけど分からない…。
なのでひろみさんへメールした。
『シーマはどんなあんばいでしょうか…?!』
と…。
しばらくして返事が来た。
シーマの写真だった。
何とも言えない顔をしていた。
ひろみさんがマッサージをしていて、馬のあの大きな目がもう少しで潰れそうな瞬間の写真。
それを見て分かった。
『マッサージ、気持ちがいい~。』
と伝えたかったんだと。
本当にひろみさんのマッサージは気持ちがいい…。
私の左手の腱鞘炎を治すためマッサージしてもらった。
私は馬じゃないけど、プロは違うなぁ~と感じた。
そのシーマの写真を見ていたらゆきのが現れた。
『シーマに、ママは安心よ!!って伝えたよ。ママのマッサージは上手だから!!』
と言い出した。
『偉いね~。ちゃんと仕事してるわ~。』
と思う私に、
『人参代!!ママに伝えて~。』
としっかりした言葉が届いた。
『はい。』
と肯き、聞き入れる私。
馬の言うことを聞いてる…、人間が…、まあいっか~。
何故かゆきのの顔色が変わった…。
どうしたのかと伺ってみた。
『シーマいいなぁ~。ママにマッサージしてもらって~。ゆきのもマッサージしてもらいた~い。』
という理由だった。
そういう事か…。
その気持ちもちゃんとひろみさんへと伝えなきゃ~!!