無駄にススメ!ブレスレット!
「便利じゃとは思うがなぁ……。
わしに使いこなせるか不安じゃ」
ああ、そうなんだ。
それは考え付かなかった。
俺は今まで性能を説明するばかりで
使いこなせるかどうかなんて気が回らなかった。
というか、使う相手の気持ちも考えてなかった。
「わからなくなったら電話してください。
24時間いつでも、どんな小さなことでも対応しますから」
「ふむ……」
おじいさんは時間を確認するように
ちらりと自分の手首に視線を落とした。
「わかった、買おう」
その家の帰り道の足取りは軽かった。
ついに初めて1台オーブン掃除機を売ることができた。
「リストラ回避! ばんざーーい!!」
会社に帰って報告すると、上司は戦慄した。
「あれが……売れただと……!?」
以来、社内での俺を見る目は変わり
俺の生活スタイルも大いに変わった。
仕事だけしか見えていない狭い世界ではなく
明らかに関係のないムダなことも手を出すようになった。
「だって、なにが活きるかわからないんだから!」
※ ※ ※
時間は戻って、
オーブン掃除機のセールスマンが営業をしているとき。
「おじいさんは、どう思いますか?」
「便利じゃとは思うがなぁ……。
わしに使いこなせるか不安じゃ」
「わからなくなったら電話してください。
24時間いつでも、どんな小さなことでも対応しますから」
「ふむ……」
さて、どうやって断ろうものか。
勢いで家に上げてしまったものの、
相手を傷つけずにうまく断る方法が思いつかない。
そのとき、おじいさんのブレスレットの液晶に文字が流れた。
"絶対使わないものを、1つ買ってください。
さもなくば、あなたの手首を吹っ飛ばします"
「わかった、買おう」
おじいさんは脂汗を流しながら、セールスマンに応えた。
作品名:無駄にススメ!ブレスレット! 作家名:かなりえずき