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4人家族会議~鈴木家から廃除されるのは誰だ~

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『4人家族会議~〜鈴木家から排除されるのは誰だ〜』


登場人物 6人(男:3、女:2、どちらでも:1)

  
僕(まさお・男)
父(男)
母(女)
妹(恵美・女))
議長(どちらでも)
かなこ(男)



横一列に、等間隔に並んだ椅子に座る家族。後ろに、議長が金属バットをもって立っている(議長は住職のような恰好をしている)

父「4」

母「4」

妹「4」

僕「4人家族」

父「我が家は4人家族」

僕「父さん、母さん、お兄さん、妹。この間までひいおばあさんとおじいさんとおばあさんががいたけれど、ひいおばあさんが死んだ。
  そしてイモずる式におじいさんとおばあさんが死んだ。死んで、我が家は7人家族から4人家族になった」

母「なんか不吉なのよね、4って」

僕「祖父の葬式が終わって2週間たったある日、そんな母の呟きから、この会議は始まった」


議長「鈴木家で一番必要のない人間を、排除します!!!」

僕、父、母、妹「鈴木家にいらない人はだーーーれだ!!!」



父「おはよう」

母「おはよう」

妹「おはよう」

僕「おはよう」

父「今日もママの作る目玉焼きは最高にうまいな!」

母「あらありがとう、パパ。パパは毎日お料理をほめてくれるから、作り甲斐があるわあ」

父「いや〜ほんとうにうまい!やっぱりラブが詰まっているからかな?」

母「やだもうパパ、子供たちの前でやめてよ〜」

父、母「あははは(狂気的に)」

妹、僕「(父、母に少し遅れて)あははは(狂気的に)」

しばらく4人、狂気的に笑っている





全員、突然無表情になる
議長、父にバットを構えている


父「・・・・どうした」

母「・・・」

妹「・・・」

僕「・・・」

父「恵美は機嫌が悪いのか?どうした!こんなうまい目玉焼きを前にしてどうして不機嫌でいられるんだ!?パパに言ってみなさい!どうしてパパは目玉焼きごときで毎日そんなにハッ  ピーなのって!パパに言ってみなさい!それはパパ以外の皆が卵焼きを食べているから!パパにだけ、毎朝与えられるのが目玉焼きだから!パパの朝ごはんだけ気持ち手を抜かれて  いるから!溢れる多幸感で悲しみをカバーしようとしているから!」

妹「おっさん!!!」

父「っ!・・・・・お・・・お・・・」

妹「ちょっと黙ってよ。今それどころじゃないでしょ」

母「そうねえ、今は我が家の一大事だものねえ」

父「・・・。そうだな・・・・うん。そうだな、確かに。ごめんよ。ただこの話し合いにおいて、何となくパパは最初から不利な気がしてさ。わかんないけどね、うん。ごめんね、どう  ぞどうぞ」

母「まさお」

僕「何、母さん」

母「ママ、高校生になってまさおに初めて彼女ができたって聞いて、本当にうれしかった。でも、その彼女があんなにも藤岡弘に似ているなんて、ママ、聞いてないわ」
妹「私もよ、お兄ちゃん」

僕「そ、そこまで似てないだろ。ちょっとボーイッシュなだけだよ。なんだよ、みんなが紹介しろっていうから昨日家に連れてきたんじゃないか。それをみんな、なんなんだあの態度。どうしてみんなあんなおそるおそる接してるわけ?」

母「だって藤岡弘よ!?あの子全長4メートルくらいあったんじゃない?」

僕「そんなにないだろ!その感じだと天井突き抜けてるよ。」

妹「直径2メートルくらいあったわね。私危うく巻き込まれるとこだったわ」

僕「なにが!?それは藤岡弘だったとしてもちょっとおかしくない!?」

母「だいたいあなたいったいどういうつもりなの?折角お母さんが踏ん張ったり引っ込めたりして、微調整を重ねてようやくイチローと同じ誕生日に生んであげたっていうのに、こんな親不孝なことはないわ。」


議長、僕にバットを構える



父「ママー〜コーヒー飲みたいんだけど」

母「コーヒーなんて昨日全部藤岡弘に出しちゃったわよ」

父「ああそうか・・・コーヒーは藤岡弘の大好物だからな」

妹「ママー私、ああいうパパが良かった」


議長、父にバットを構える


父「恵美―――!そうだったのか」

僕「僕の彼女が藤岡弘という体で話が進んでいくな」

父「いや〜しかし、こういうことが起きたからには、この鈴木家でいらないのはまさおということになるな!」



議長僕にバットを構える


僕「えーーなんでだよ、まってまってまって!!僕よりいらないのは父さんだろ!?」

父「そんなことはない!!父さんはポンコツではあるが、抜群に無害だ。人畜無害な人間だぞ!」

僕「余計な理屈はいらない!ここは民主主義らしく多数決で決めようじゃないか。鈴木家では父さんがいらないと思う人」

母「はい」

妹「はい」

僕「はい」

音響「はい」

照明「はい」

僕「数こそが正義!」

父「でましたこれが数の暴力!!」



議長、バットを振り下ろす



父「ああああまってまってまってよ皆冷静になるんだ!父さんは、毎月みんなのためにお金を運んでくるよ!!」

妹「そう、そこなのよね」

母「そこなのよねー」

父「そうなんすよー。このポイントはでかいですよ。ちょっと頼みますよー、まさおさん」

僕「そこなんだよなー。じゃあ、まあいいか。父さんは一旦」

父「・・・・え?なんでジャマイカ?」

妹「ジャマイカ?」

僕「・・・。何が!?じゃあまあいいかっていったの!なんだジャマイカって!!やっぱダメだ父さんは!鈴木家から排除しよう。あえて理由をあげるならそれはイライラするから」

父「そんなひどいっす」

妹「まって」

僕「どうした恵美」

妹「一言言わせてもらっていい?」

父「どうしたパパを助けてくれるのか」

妹「そういうわけじゃないけど、ママは家で素っ裸で過ごすのはどうにかならない?」

僕「うん、そうだな。昨日きた僕の彼女も驚愕していたよ」

母「でもこれは貝殻ビキニよ」

父「うーん、でもうちみたいな一般家庭では所詮シジミだからなあ。遠くから見たら完全に全裸だよね。で、全裸だと思って近づいたら、・・・・あっシジミか!ってそこでびっくりす  るよね」

妹「それに単なる裸族というわけじゃなくて、ママは露出狂の気があるわ。そのうちこれで出歩くようになるかもしれないわよ」

僕「おいおいおいおい」

母「好物は素うどん。好きな調味料はお酢。好きな電球は、裸電球(にやり)」

父「・・・。まさおさん、見てくださいよ。この女やべえっすよ。やっぱ鈴木家から除外するのはママなんじゃないっすか」

僕「うーん、たしかになあ。わかった、母さんに犠牲になってもらおう!」


議長、バットを構える


母「待って!そう決めつけるのは気が早いと思うわ」

僕「どうしたの母さん」

母「みんな、ひいおばあちゃんの事を覚えてる?」

父「もちろんだよ。僕のお母ちゃんだ」

僕「うん、足が悪かったけど、いつもニコニコしてるかわいいおばあちゃんだったよね」

妹「年取ってからはずいぶん小さくなっちゃったけどね」

母「そうね。家の中ではよく(自動お掃除ロボット)ルンバに乗って移動してたわよね」

父「ひいおばあちゃんは小さかったからなあ」