いい加減ちゃんとリアクションしろっ!
「さっきから話してるじゃないか」
「捕まったやつは、みんな同じことを言う。
けど、足りないんだよ」
「足りない……?」
「リアクションが」
「リア……えっ?」
尋問間は、取調室に妙な装置を取り付けた。
「真実というのは、真実味があってこそ真実だ。
真顔で淡々と語られても、信じたくなる真実じゃない」
「いや、それより! その装置はなんですか!?」
「これはリアクション検出装置。
低いリアクションを取った場合は電流が流れる」
「へぇ……ってうおおお! そうなんだ!
知らなかったなー! びっくりした!」
「ふん……急きょリアクションを大きくして電流を逃れたか」
脂汗がこめかみを伝って落ちる。
さっきまでの尋問とは全く違う緊張感。
ちゃんとリアクションしなければ……俺は黒焦げだ。
「それじゃ、もう一度、最初から質問するぞ」
「ええ!? さっ、最初からですかぁ!?」
「いいリアクションだ」
俺は声を張り上げ必死にテンションを上げる。
「昨晩、自宅の冷蔵庫からプリンが失踪した。
容器からはお前の指紋が検出された」
「なんだって!? そんなことがあるんですか!?」
「お前が、犯人か?」
「いやいやいや! 違います! 違いますよ!
確かに冷蔵庫を開けたときに気になって触りましたが、
フタに書かれている名前を見て戻しました!」
「その大きなリアクション……ウソではなさそうだ」
「信じてくださるんですね!」
リアクションするのに必死だ。
もし、俺が本物の犯人だったら気が気じゃない。
大きなリアクションをしつつ、真実を隠すなんて芸当できっこない。
「凶器のスプーンがお前の部屋から見つかった。
プリンはスプーンがないと食べれないが?」
「ちっ、違いますよ!
あれはアイスを食べてたんですっ」
尋問官は腕を組んで長い溜息をついた。
「お前が犯人だな」
「なっ、なんで!?」
このリアクションだけは素で大きくなった。
「リアクションが大きすぎてわざとらしい。
真実というのは、常にちょうどいいリアクションじゃなくちゃ
真実味というものがついてこない」
「めんどくさいなっ!」
「そう、そのくらいのリアクションだ。
相手の質問にちょうどいいリアクションを返せることこそ
本当の意味での真実といえるだろう」
尋問官は座り直し、顔をずいと近づける。
「で、お前がプリンを食べた犯人なんだな?」
大きなリアクションを取れば疑われる。
小さなリアクションだったら電流が流れる。
一番ちょうどいいリアクションは……。
「……疑われるのも無理はありません。
僕だという状況証拠がそろっていますから」
まずは声を潜めて、そっと話し始める。
このままだとリアクション検知されて電流の餌食にされる。
俺はここから一気に声を張り上げる。
「でも、違うんです! 僕は食べていないっ!
なぜなら僕は……そこまでプリン好きじゃないんだっ!!」
完璧なリアクションで答えた。
最初こそ相手に従うような形にしたうえで、
最後に自分の無実を必死に訴えかける。
これ以上、真実味のあるリアクションはないだろう。
尋問官もさすがに納得したような顔をして答えた。
「……あ、そう」
薄いリアクションをした尋問官に電流が流された。
作品名:いい加減ちゃんとリアクションしろっ! 作家名:かなりえずき