からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話
「康平クン。あなたには、女難の相がありそうね。
まず、あの過呼吸症の女の子でしょ。
次が、健康そうだけど病院の匂いがしている、不思議な女の子。
最後に登場したのが、テニス部の後輩で、いまは『孕み女』の美和子。
昨日の夜から、3人の女が相次いで登場した。
あなたの女性遍歴っていったいどんなふうになっているの。
あ・・・最後に私が乱入したから、これで4人揃った計算になるわね。
ふふふ」
「先輩。病院の匂いがする女の子って、誰のことですか?」
「座ぐり糸作家でしょ。あの子は。
座ぐり糸で同期のはずだから、美和子の知り合いのはずよねぇ。
なんといったかしら。
最近は、小さなアトリエを作って頑張っているはずですけど・・・」
「それなら、千尋です。
でもなぜ千尋から、病院の匂いがしているのですか?。先輩」
「あの子。見た目は、健康に見えます。
でもね。医者には病人を見分ける、第六感があるの。
病院通いしている患者さんからは、独特の匂いがします。
もちろん、消毒液やクレゾールの匂いじゃありません。
治療中や経過観察中の患者さんから、雰囲気だけでピンとくるものが
何故か有るのよ」
「千尋がどんな病気にかかっているか、予測できますか。先輩は?」
「やっぱり当たっていたの、ふ~うん。
そうね。若い女性で治療を続けている病気といえば、1位は、乳がん。
続いて、子供を育てるための器官の障害で、子宮周辺の病気が多い。
20代から30代の女性たちに、急激に増えてきたのが、子宮頸がん。
これらがとりあえず、考えられますね」
「さすが先輩。切れ味の良さは、昔とかわっていません。
天才といわれた洞察力は、健在のようです」
「洞察力がどうしたって?。
いったい何の話が始まったんだ。俺にはさっぱり訳がわからないが・・・」
「テニスの試合で先輩は、鋭い洞察力を武器に勝ちすすみました。
早いサーブも使わないし、強い打球も打ち込みません。
それでも、なぜか相手を翻弄するの。
相手の目の動きや、体の傾き、手や脚の使い方から、ボールがどこへ
飛んでくるのか、予測ができるそうです。
鋭い洞察力が、今回も千尋の病気を見事に見抜きました。
それに気がついたから、わざわざ、わたしに声をかけてきたんでしょ。
いつものことながら、おせっかいが大好きな、私の大先輩」
「うふふ。その通りよ美和子。
それが私の、悪いクセのひとつです。
では、そういうことで、ここへ座ってもいいかしら。立ち話もなんですし。
たっぷりこちらへお邪魔してもいいかしら。ねェ、
女難の相が出ている、康平くん」
(101)へつづく
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話 作家名:落合順平