からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話
「ふぅ~ん。
ところで、あんたと一緒に働いている長身の相棒だけど、
あれはいったいどこの何者なの。
千尋が言うには、あの背格好に、見覚えがあると言う話です。
白状しなさい。どこの何者なの?」
「今は白状できない。
いい男で、俺たちの仲間の一人だ、としか言えない。
それよりそっちはどうなんだ。
勝算はあるのか。電気量販店の妹に幸太郎氏を取られないための?」
「確率って言いなさい。勝算という言葉は好きじゃない」
「では聞きなおそう。確率はどうなんだ」
「ゼロかなぁ。有っても、5か10%程度・・・・
そんなものでしょう、わたしが結婚できる確率的は」
「ゼロってお前。・・・・いいのかよ、そんなことでも」
「パパが決めることだもの。私には、どうにもなりません。
康平が言うように、今からでも手首を切って驚かしてみょうか。
でもさぁ・・・分かってはいても、そういことができない女なんだよ、
あたしっていう女は」
「それで大丈夫か、お前は」
「なにが?」
「精神的にさ。
本当は、まいっているんじゃないのか。無理してないか?」
「ふふふ。ありがとう。
そういう風に、本気で心配してくれるのは康平だけね。
大丈夫です。結果は、なるようにしかならないもの。
私のことよりも、あんただって大変じゃない。
千尋をめぐって、男同士の呉越同舟でしょ。
どちらかが、そのうち沈没する運命になる。
それは、わたしも同じ。
あたしは、どうにもならないジレンマの中で、針のムシロ状態です。
世の中。うまくいかないものですね・・・・」
「まいったなぁ。全部お見通しか。
あの男が、京都時代の恋人と気がついているのかな。千尋は」
「うすうすと感じているようです。
でも終わったことだと、本人はきっぱり否定しました。
だけどねぇ。男と女のことは、先のことがわかりません。
美和子の歌の文句じゃないけれど、赤い糸は、
どこへつながっているんだろう。
康平。あんたの赤い糸はどこへつながっているの?」
「俺の赤い糸か・・・
なんだか、全部まとめて切れちまいそうな気配が漂ってきている。
たしかに男と女の未来のことは、誰にもわからない。
一杯飲むか。おごるぞ」
「いいねぇ、モテない男と女のやけ酒か。
康平のおごりなら、死ぬほど、たっぷりと飲む!」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話 作家名:落合順平