小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話

INDEX|14ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 こうした献身的な活動の表の顔とは別に、信仰上の大きな悩みとして、
 神の不在感という『裏の顔』も持っていた。
 『神の存在への疑念』は、ペリエール大司教へ送った手紙の中で
 明らかにされている。
 『私の心の中に恐ろしい闇があるために、まるですべてが
 死んでしまったかのようです。
 私がこの仕事(※インド貧民街での奉仕の仕事)を始めるようになって
 間もないときから、このような状態(神の存在への疑念という悩みが)
 がずっと続いています。』

 マザーは、神への信仰を力強く語り、多くの人々に
 励ましと勇気を与えてきた。
 しかし、霊的指導者(神父)たちに宛てた手紙には、
 それとは全く正反対の、『神の存在への疑念』が述べられている。
 「Come Be My Light」が出版されたことにより、マザー自身を長年にわたり
 悩ませ苦しめてきた「心の闇」の存在が、広く知られるようになった。
 マザーが神の存在について、疑念を持っていた事実が明らかになった。
 「心の闇」を告白したマザーの手紙を、教会関係者が一般向けに
 出版したことにも、驚かされる。
 マザーの内面を公表することが、彼女の信仰を貶(おとし)める
 ものではなく、カトリック教会の権威を、傷つけるものでもないという
 確信があってのことだと思われる。

 この本のおかげで多くの人が、マザーの「表の顔」の奥に、
 「心の闇」という「裏の顔」があったことが、知られるようになった。
 人々の目に映っていたのは、自信に満ち、信仰の中で常に
 神(イエス)と一体化しているマザーだ。
 喜びと感謝に溢れ、一切の苦しみを超越しているマザーの姿だ。
 そのマザーとは別の、もう一人の悩み苦しむマザーの姿が明らかにされた。
 神の存在に対する確信が得られず、
 『イエスが自分から去ってしまった、イエスに愛されていない』
 と感じ、孤独に悩む哀れなマザーの姿が、表に出された」

 「ありがとう。迷える子羊への、的確なアドバイスです・・・・
 救われた気がするわ。康平」

 「君はまだ、迷ってはいない。
 ただ少しだけ、こころが傷ついているだけだ。
 傷ついたら、時間をかけて直せばいい。
 君は休養を拒否して、表の部分で『良い子』を演じてしまう。
 疲れたと言って、心の休息をとれ。
 誰も咎めたりはしないさ。
 今の君に必要なのは、こころの休息だからね」