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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第十四話

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「お帰りなさい。お疲れじゃなかったんですか?」

「ううん、十分飛行機で寝れたから大丈夫。時差ボケしない方だからこういう時は助かるね」

「へえ~わたし海外へ行ったことが無いからそういうことよく解りませんけど、時差ボケって耳にしたことはあります」

「モロッコは日本の裏側と言うか時差が大きいから、こちらの昼は向こうの夜だったりするんだよ。飛行機で睡眠をとれないと時差ボケする」

「そういうことなんですね。私は寝れない方なのでちょっと辛いかも知れません」

「そういう人は睡眠剤を持参すると良いよ」

「睡眠剤・・・そうなんですね」

笹川は車をホテルの入り口に停めた。駐車場に回してくるから待っているように指示された。
予約してあったレストランに入ってイタリアンのディナーが運ばれてきた。

「じゃあ、ワインでまずは乾杯しよう。車はここに置いてゆくので大丈夫だよ」

「じゃあ、帰りはタクシーなんですね」

「美津子さんはそうしてください。ボクは泊まります」

「そうですか・・・では、乾杯!」

笹川からのプレゼントはキーホルダーだった。
色違いで自分も同じものを買ったと言った。彼の心の中にはもう結婚相手としての存在となりつつあるのだろうか。

食事の間にモロッコでのことを話してくれた。自分の商売がこれからどこへ向かうのかも少し聞かされた。
取引先が関東に多いのでそちらへ今後事務所を移したいとも考えているようだ。
そうすると結婚すれば東京に住むことになるかも知れないと懐かしいような行きたくないような気持ちに揺れた。

「今日はありがとうございました。笹川さんとお付き合いして行けそうに思えます」

正直に気持ちを話した。
ニコッと笑って彼はそっと私の手を握り見つめながら返事をした。

「明日の朝早くに自宅まで必ず送ります。一緒に泊まってくれませんか?」

そう言われるだろうと予想はしていたが返事に困った。
理由は生理日だったからだ。