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てっしゅう
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「父親譲り」 第十三話

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「お上手なんですね。商売をされている方は違いますね。ところでどうですか、私のお願いの件は?」

「解りました。帰ってきたら一緒に温泉にでも行きましょう。のんびりして将来のことを語り合えたら嬉しいです」

「そうですか。ではその時を楽しみにお待ちしています。わがまま言って申し訳ありませんでした」

「そんな丁寧な・・・美津子さんは育ちが良いんですね。感心しました」

育ちが良い、そんな言葉を初めて掛けてもらった。
苦労してきた経験が大人っぽい言葉遣いとか、態度に出るのだろうか。
過去を話すと笹川は引いてしまうかも知れない。
聞かれても黙っておこうと考えていた。

その日の夜父がお風呂に入ったタイミングで母親に話を持ち掛けた。

「お母さん、お父さんの居ない時に言いたかったの。私ねお付き合いしている人が出来たの。言わなかったけど婚活パーティーで知り合った人」

「ええ?急な話ね。どんな人なの?」

「うん、貿易会社をやっている人でお金持ちの方。海外出張に一緒にって誘われたけどそれはお断りした。帰って来られてからゆっくりとお話したいって思っている」

「再婚を考えているのね。お父さんが何というか心配よね」

「正式に決めたら話はするけど今は黙ってて。どうなるかはまだ分からないから。それとねもう一ついい?」

「解ったよ。もう一つって何?」

「昨日お母さんの部屋で下着探すのにタンス開けたら変な物見つけちゃったの。意味わかる?」

「一番上の引き出しにあったもの?」

「そう、じゃあ分かるのね。私が子供の頃からお父さんずっと使っているの?」

「そんなもの見られて恥ずかしいよ・・・お父さんね、お前が中学生ぐらいの頃に前立腺のガンに罹って手術で取り除いたの。それ以来出来なくなって。解るよね?男の人の仕組みって」

「うん、そのぐらいは解る。若かったからきっとお父さん悩んだんだろうね」

「そうね、でも命には代えられないって先生の指示に従って摘出を決めたの」

「それで、お母さんが可哀想だからってあれ使って慰めていたのかしら?」

「違うの。私はもうお前もいたしこれからはそういうことしなくても夫婦として支障なくやって行けると言ったのよ。でも・・・」

そこまで言うと母は涙を見せた。