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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第十三話

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沙代子は美津子に電話では言いたくなかった。亡くなった妻に似ていると言われて情にほだされて付き合いを始めた彼は、抱かれていても目が座っていなくてきっと奥さんのことを思い出しているのだろうと感じてしまうのだ。

自分の中に入ってきても、直ぐに終わってしまい大きなため息をつく仕草をした。
それが何を思ってなのか聞くことはしなかったが、言葉の優しさより態度の優しさがもっとほしいと悲しくなっていた。
美津子に会って話してもどうなる事ではないが、自分の彼に対する気持ちが揺らぐことは引き止められるかも知れない。

それはきっと言葉で慰めてくれるだろうからだ。
その時にもやもやが残ればあの時のように美津子と再び感じあうことも可能に思える。

朝目覚めたら母が先に起きて台所に居た。

「お母さん、もう治ったの?無理しなくていいよ、私がいるんだから」

「美津子、昨日はありがとう。一日寝たらすっかり良くなったよ。大丈夫だから気にしないで」

「ならいいけど。ねえ?今日帰ってきたらお母さんに話があるんだけど聞いてくれる?」

「かしこまって何なの?大切な事?」

「うん、大切な事だよ」

母に彼、笹川謙一のことを話そうと思っていた。
今日の返事で終わりになるかも知れないけど、そうしたらあのオモチャのことが聞きたいと思った。

美津子は職場の昼休みに携帯から電話をかけた。

「もしもし、笹川さん?美津子です」

「ああ、美津子さん。いい返事頂けるんですか?」

「そのことなんですが、仕事を休むことが出来ないのでまず一週間は無理なのですが、それより私のことをどう考えていらっしゃるのかお聞きしたくて電話しました」

「お見合いの席でプロポーズしたのですから真面目に考えていますよ。それはお互いにそうでしょう?」

「でしたら、出張からお戻りになられてゆっくりとお話させて頂きたいと思います。私以外にお付き合いされている方がいらっしゃるのでしたら別ですけど」

「そんな人いるわけないじゃないですか。酷い言い方だなあ~」

「それなら嬉しいんです。笹川さんは素敵だからおモテになると考えちゃったので、つい言っちゃいました。ゴメンなさい」

「美津子さんの方こそ男性が言い寄ってくるように思いますよ。だから連れて行きたいと思ったんです」