イメージ 〈詩集〉
横断歩道
信号が点滅を始めているのに
君が走り出した
すぐに追いかけて並んだ
手を伸ばすと君の手がつかむ
手をつないで渡りきった時は
信号は赤だった
何も急ぐことはなかったのに
君はせっかちだね
あるいは計算通りだったの
伸ばした手に応える間は自然
渡り終えた時の笑い顔は
悪戯っぽかった
初めて手をつないだ筈なのに
君がほどかないから
そのまま歩いていたんだ
たぶんにやけた顔をしてた筈
そんな昔の思い出の歩道を
独りでゆっくり渡った
まだしっかり覚えているのに
君が隣を歩いていても
もう気付くこともないだろう
それだけ多くの年月が経っている
そんな思いで渡った
もう風景も変わっているのに
君と入った喫茶店は
そのまま同じ場所にあった
創業何十年とかの冠をつけて
それだけで嬉しかった
駅前から繁華街に入る横断歩道
それを渡りきった先に
青春のかけらがあった