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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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毎週月曜日のシカさん。~その一~

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十年くらい前から始まった話。
まだその頃はコーギーのリップ(犬;本名)がいた。
今はもうリップはここにはいなくて、上の世界からいつもこっちを覗き込んでいる。
たまに鼻水を垂らしながら…。
昔から年寄りの話はちゃんと聞いておくもんだったなぁ~。
“死んだら、天国と地獄があるんだよ!!”
と…。
あながち間違いじゃなかったところにドン引く私…。
そんな事を言っていた本人は死んでその後、何処へやら…なんて過るところもあるけれど、そこは置いておいて…。
リップを連れて、いろんな所へたくさん旅に行った。
おドライブはほぼ週末の度に行っていたほど行っていた。
何分、リップはおドライブが好きで、車から鼻を出して気が済むまでひたすら外を匂う。
その鼻水が毎度毎度私に降り注ぐ…。
私も窓を開けていたら外を通って私の顔に降り注ぐ…。
『リップ、お鼻水!!』
と一応突っ込んだりして…、でも本人は全く気にしていない。
まあ、私はそこが面白いと思うから、この一連を止められなかった。
しかしその横で旦那さんは毎度毎度、
『汚いっ!!』
と言って、強制的に窓を閉めていた。
有無を問わず、そうなる。
そんな事をされようもんなら、助手席の私の後ろにいるリップは、左から顔を出して来て私の肩に顔を乗せ、そして二人で旦那さんの愚痴が始まる。
『ちょっと聞いた~?!お鼻水が汚いってよ~。なくな~い?!お鼻水あっての何かしら~(リップ自身が犬であると教えてなかったので、こう言っていた。)なのにねぇ~。』
と言って、二人で旦那さんをジロ~っと睨んでいた。
リップの視線は左から私をまたごし、旦那さんの顔を伺う。
二人で睨んでいる事に気付かれたら、二人して怒られる…。
そして言葉はなく私とリップは目で合図する。
まっ、それも楽しさの一つだった。
そんなおドライブを送る人生の中、富士山の樹海の周りを目的もなく行ったりもしていた。

そしてある日、また目的もないおドライブへとなった時に、富士山の樹海へ行こうとなった。
それは、何故か…。
樹海にはシカさんたちがたくさんいるからで、自然の動物に無料で会えるというラッキーな出来事が起こる。
ただただそのシカさんたちをまた見に行きたいと思っただけの事。
そしていざ出陣!!

リップを撮るために買ったカメラを持って、ついでにシカさんたちを撮れたらなぁ~なんて思ったり…。
そして自分たちの穴場へと辿り着いて、他の車がいないのを見計らった時にゆっくりと進んでもらう。
夕方前からシカたちはエサを食べるためか、見える範囲へと現れる。
そんなシカたちを探す…。
リップは興味ないので、後ろの席で寝てたり水を飲んだり、たまに私に話し掛けて来たり…。
目を凝らして探す…。
『…あっ、いたっ!!しかもシカの群れっ!!止まってっ!!』
と私がまくし立てるように言う。
旦那さんも慌てちゃいかんのに慌ててしまう。
そーっと窓を開けて、カメラをスタンバイ…。
そんな私の気持ちに答えてくれるわけもなくいつも逃げてしまう。
そしてこの日もシカが逃げ始めた。
何を間違えたか、私の口から、
『待ってーっ!!』
と言葉が出た。
それはとても不思議な出来事だった。
シカたちが急ブレーキを掛けたような…、つんのめるような形でピタッと止まった。
そして振り返りこちらを見ていた。
私の頭に、“これはいいのだろうか…。”と過りながらも、手はカメラを用意しているし…。
シカの中で逃げようとする者もいたから、またまたついつい、
『ちょっと待って!!お写真…、お写真を撮りたいから…。』
と言ったら、後ろからリップが出て来た。
『あんたじゃない。』
と一言。
逃げようとしたシカは止まってくれた。
そしてカメラを構えて写真を撮る私。
ついつい、
『はい、お写真撮る時は、カメラ見て~。…はい、撮るよ~。せーのっ。』
なんて言いながら撮っていた。
もちろん自分に言われていると勘違いしてリップはまた登場してくる。
それを毎回突っ込んで、違うと言う私。
しばらくこの光景を受け入れられなかった旦那さんは、我に返って一言、
『“待って。”でシカは待っていいの…?!』
と困っていた。
私も正しいかは分からないけど、
『いいのっ!!』
と断言した。
私に慣れたのかは分からないけど、十頭ほどの群れの中に小さなシカが数頭いた。
そのシカたちは初め私を見て驚いていたけど、私を一切気にせずに草を食べ始めた。
そして一番気になったのが、木に隠れて左目だけを出して私をジーーーッと見ていた大人のシカ。
木に隠れきれてると思ってたんだろうなぁ~。
三十~四十センチ幅の木に隠れきれても首くらいかなぁ~というくらい、隠れきれてなかった。
しかも片目を出してるって事は、耳も口や鼻も多少出ているということ。
見てるこっちが恥ずかしくなった。
しばらくそのままにしていたけど、と言っても二、三分くらい、不意を突いた私はサッとそのシカの方へ向き、
『バレてるよっ!!』
と突っ込んだ。
言いながらそのシカと目が合っていた。
シカが私から目を逸らし、少し後ろに下がったと思ったら、片目を出してた木の反対側から何事もなかったかのように出て来た。
そして間を開けて私を見た。
その瞬間の写真を撮った。
撮られたシカは恥ずかしいだろうなぁ~。
まさか撮られてるなんて知らないだろうから…。
ちゃんとカメラ目線だし…。
五分ほどそんな事をしてたら、群れのオスリーダーが、
“キー、キー。”
と警告音を出し始めた。
これがめちゃくちゃうるさい!!
リーダーは逃げようとしてるのに、エサを食べてる小さいシカたちは無視してまだ食べていた。
旦那さんに、
『危ないから行くよ。』
と言われて、まだ見ていたいと思っている間にシカたちは逃げて行った。

これが私とシカの出会いだった。
それからシカを止めて写真を撮るのが楽しくなった。
でも、旦那さんからは、
『ある一定まで。それ以上はダメ。』
という約束の下だった。
私にとっては厳しい約束…、でもシカにとっては大事なルール…、しょうがないと受け止める私。

そしてこの話を早速お母さんに電話を掛けてしたところ、
『そんな事、あるはずない。シカが止まる…?!ないない。お母さんが仕事行く時に、シカがいたりするけど、み~んな逃げるよ~。“待って!!”なんて言う前に逃げる。だから、そんな話はない。』
と聞く耳持たずだった。
それでもたまに富士山の樹海に行って、シカを止める度にお母さんには言っていたけど、全く信じてくれなかった。

それから、五年くらいしてからだったと思う。
お母さんの家に帰っていた時、お母さんの仕事の用事で遠出をした。
山を越えて行った先だったから、帰りも同じように田舎道を通って帰った。
日が落ちてしまった帰り道、道路沿いの民家が続く中、車を運転していたお母さんが、
『シカシカシカシカ!!』
とちょうど空き地になっていた所を指さし、十頭ほどのシカの群れを見付けた。
私は窓を開けたけど、間に合わずチラッと見ただけで、サーッと通り過ぎてしまった。
咄嗟に、シカを止める事を思い出した私は、