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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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海の約束

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 おばさんの目から、涙があふれた。
「今朝がた、さえこが笑っている夢を見たの。何年ぶりかしら」
 おばさんはぽつりぽつりと話し出した。
「それもね、浴衣をきていたの。あのとき、あやちゃんといっしょに着るはずだった。覚えてる? 朝顔の模様の」
 わたしは、大きくうなずいた。そして、今度はゆっくりと話した。この町に来たいきさつも、浴衣を海に投げたことも。海から出てきた、あの銀色の影のことも。
「ありがとう」
 おばさんは笑った。昔と同じ笑顔だ。
 その瞬間、わたしの心のよどみも、きれいな清水に変わった。

「今度は、ホテルになんか泊まらずに、うちにいらっしゃい」
 別れ際、わたしの背に向かって、明るい声でおばさんが言った。
 振り向いて手を振ると。
 きらり。
 その向こうの波頭の陰に、銀色の魚がはねあがった。
 
作品名:海の約束 作家名:せき あゆみ