月彼女
よし、何とかっていうか普通に間に合った。よかった。
僕の務める出版社は小さな商業ビルの二階にある。そんなに大きな会社ではないけれど、僕の大好きな会社だ。
「おはようございます。」
『うぃーす…。』
前のデスクの道古さんがボサボサ頭と冷えピタ、そして目の下にはたっぷりくまを作って言った。
「道古さん、また会社に泊まり込みですか…?」
『みりゃわかんでしょボケ。』
「オツカレサマデース……。」
そーっとなるべく音を立てずにデスクに荷物を置いた。次気に障ることしたら、多分殴られ………
「…あれ?」
書類がアルプス山脈並みに積まれた僕のデスクの上に、ポツンと置かれた白い一枚の知らない紙。
何これ、こんなの僕知らないよ。
「……契約解除?」
そこには、南野ことりとの契約を解除すると書かれていた。
どう、いうこと?
南野ことりとは、僕の担当している小説家の一人だった。