夫婦の形
二話 園山猛の場合
園山猛・31歳はずっと自宅マンションの一室にいた。
作業着用の繋ぎを着てパレット片手に絵を描いている。
そう彼の職業は画家だ。しかも何処にも所属していないフリー画家だった。一度だけ所属した事があったがその時に起こした問題で二度と事務所に所属しないと猛は決めた。元々人見知りで一人でも特に困らない性格な為、その時以外はずっと自室で一人籠って絵を描いていた。
そんな時、行方不明だった猛の兄・計が突然やってきた。
「やあ!久し振りだ、我が弟よ!!」
物凄く人変りしていた。
一体行方不明の二年間に何があったのか。
「…………」
猛は当然無視一択だ。
「相変わらず絵ばかり描いているのだな、弟は」
「…何しに来た」
「弟よ、今何歳だ?」
「…31だけど」
「ならばこれだ!」
計はあるチラシを猛に見せる。
「……で?」
「お見合いだ!弟よ!時代はお見合い結婚なのだよ!!」
「…いつの時代だよ」
「何時までもこんな生活していては体を壊してしまうぞ!我はそれを畏れているのだ!心配しているのだ!分かってくれ!!」
「…なんでだよ。それより今まで何処行ってたんだよ…二年も行方不明っておかしいだろ…」
「我にも色々あるのだよ…」
「…あっそ…」
「まあ今日の所はこれにて勘弁してやろう!ではな弟よ!!」
そう言って計は何処かへ行ってしまった。
猛は溜息を吐くと置いていったチラシを見た。そしてまた溜息を吐き、丸めてゴミ箱にポイッと捨てた。
***
4月11日(日)
計が猛の下にやってきて無理矢理お見合い相談所へ連れていったのだった。