夫婦の形
一話 川崎有希の場合
大手食品会社『美多摩食品』に努める川崎有希・29歳は受付嬢をしている。美人で頭の回転が速く誰にでも気配りが出来る、まさに完璧人間だった。
しかしだからだろうか…。
完全にこの年になるまで婚期を逃していた。
会社のお誘いや、先輩後輩関係や、友人関係で合コンなどに行っていて結構出会いの場はあった筈だった。そこでの出逢いで付き合うことはあっても、同棲まで行っても、結局結婚にまでは至らなかった。
「はぁ…」
溜息を吐いていると後輩の橘百合子が来た。
「どうしたんですか、先輩。溜息なんかついて」
「橘ちゃんか…はぁ…」
「人を見るなりいきなり溜息吐かないで貰えます?」
「だって…若いっていいわねぇ」
百合子はある事を思い出す。
「ああ、そういう事でしたか…」
「そういう事よ…」
「何か自分で行動とかしないんですか?」
「行動って何よ?もう合コンとか行き飽きたわよ?大体合コンで結婚相手決めるって無理があるでしょ…」
「じゃあ、お見合い相談所にでも行けばどうです?」
「お見合い相談所…ねぇ」
そして有希は決意する。
どうせ今年で20代は終わる。
最後の20代なら三十路になる前に結婚をしちゃおう。という思いの下、休日にお見合い相談所に行くことにした有希だった。