ロロと12人の妻
屋敷の外には敵軍が待ち構えていて、わたしはほかの妻たちや使用人とともにとらえられました。
目の前で屋敷が燃え、崩れ落ちていきます。スケイルズ卿と妻たちの捻れた蜜月は、こうして終わりを告げたのでした。
夫は謀反を犯した犯罪者とされ、その妻であったわたしたちも罪に問われました。命を奪われまではしませんでしたが、国を追われ、故郷に帰ることもゆるされず、小さな島に幽閉されました。
わたしたちには錆びれた小屋と畑だけが与えられました。経験のない身には農業も狩りも簡単にはいかず、夏の暑さで井戸も枯れ、これまでの贅沢な生活とは比較にならないような過酷な毎日がわたしたちを待っていました。
2年後、ジュリアが死にました。落ちぶれた我が身を悲観し、自ら命を絶ったのです。ほかの妻たちも疲れきっていて、病気にかかる者もいました。
固く乾いた畑を耕しながら、わたしは汗を拭いました。強烈な日差しに晒され、眩暈に襲われます。飢えと疲労で、体が弱りきっているのです。
背後には切り立った崖があり、その下には荒れた海がどこまでも続いていました。
鍬を持った自分の手を見下ろします。掌には肉刺がひしめき、短く裂けた爪の間には黒い土がこびりついていました。島に鏡がないことは唯一の幸福でした。今の自分の姿を見れば、わたしもジュリアのように自殺していたかもしれません。
12人の妻は、今ではわたしを含め4人になっていました。このだれも知らない島で、わたしも彼女たちもだれにも惜しまれることなく、ひっそりと人生を終えるのでしょう。
あるいは、はじめから存在しなかったのかもしれません。スケイルズ卿の妻は、あのロロただひとりでした。こうしてみすぼらしい畑を耕しながら、わたしはときどきそう思うのです。
おわり。