からっ風と、繭の郷の子守唄 第81話~85話
「聖パウロカトリック教会は、万人にひらかれています。
カトリック信者でなくても、いくつか条件を満たせば大丈夫です。
条件は、たったの4つ。
1.二人とも初婚であること。(死別の場合は除く)
2.両親が賛成していること。
3.立会人がいること。(二人のみの挙式は出来ません)
立会人は友人、両親でも大丈夫。
4.式の前に司祭の面接を受けること。
これだけの条件を満たせば、誰でもここで式をあげられます。
よかったわねぇ、貞園。処女でなければ駄目とか、
愛人経験者は徐外するなどと、一切書いてありません。うふふ」
「よく言うわよ。大きなお世話です。
そういうあんただって、会社の上司と不倫の真っ最中じゃないの。
そういう女性も、やっぱりここは、寛大に受け入れてくれるのかしら?」
「こらこら。内輪揉めはいい加減でやめなさい。
はしたないですよ、2人とも」
「そういうあんたこそ、バツイチじゃないの。
そういう女は、ここでの挙式が出来ないのよ、分かってるのあんたこそ」
「しぃ~。静かにして。お式がはじまります」
台湾美女3人の口は、一向に止まらない。
花が飾られ、オルガン演奏者と聖歌隊が本格的な楽曲を奏ではじめる。
ヴァージンロードを優雅に歩いて、純白衣装の花嫁が現れる。
カトリックの挙式は、司祭の先導でおごそかにはじまる。
夫婦の儀式は、一般に見られる誓いのキスではなく、握手になる。
二人でワインを飲む場面もある。
事前に神父との簡単な面接があるが、結婚式の進行はまったくの、
台本無しのぶっつけ本番だ。
決められた手順を淡々とこなして、結婚式が進行していく。
式は、30分とかからない。
教会内での式が終わると、祝福の儀式が表でふたりを待っている。
ライスシャワーのあと、幸運を呼ぶ鐘が鳴らされる。
新婦のドレスが汚れないよう、敷物が用意される。
敷物は赤い絨毯ではなく、ごく一般的な、どこにでもある普通のものだ。
それに違和感を感じる人も、何人かいるようだ。
「予算が10万では、スピード運営とごく普通としか思えない、
足元の敷物なのかしら?」
「次のカップルが、駐車場で順番を待っています。
大安いう縁起の良い日、教会と関係のない日本の風習で予定が満杯です。
洋風の結婚式なのに、日本の縁起をかつぐなんて、
まったくもって新婦も何を考えているんだか、ワケがわからないわ」
「新婦は韓国籍でも、新郎が日本人だもの。仕方がないでしょ。
この時期はどこのカトリック式の教会でも、大安の日は商売繁盛で
同じように大忙しになるのよ。
式はあくまでも、ただの儀式です。
遠くから駆けつけてくる参列者から見れば、簡単明瞭で、
短く終わってくれた方が、好感が持てます」
「あっ・・・貞園。ほら。さっきの子。
カフェで見かけたさっきの子が、あそこに立っているわよ」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第81話~85話 作家名:落合順平