からっ風と、繭の郷の子守唄 第81話~85話
「カフェが営業しているわ。
そこにしましょう。早朝から運転したので、少し疲れました」
「貞園も前日から来て、私たちのようにホテルへ泊まればよかったのよ。
ヤキモチ焼きのパパを持つと、そこまで神経を使うようですね。
でどうなのさ。パパの離婚ばなしの進行状態は?」
「いい加減にしなさい。あんたも。
神聖な教会でこれから同級生が、結婚式をあげる日だというのに、
朝から私の離婚の報告を聞いてどうするの。
そんなことだから、あんたは、いつまでたっても独身のままなのよ」
「大きなお世話だわ、貞園。
男に束縛されたくないだけです。別に不自由してはおりません。
あんただって似たようなものじゃないの。
専属で契約を結んでいるか、その場限りで楽しむのかの、2つにひとつ。
結婚は大きな願望だけど、その先には、男からの拘束が待っているだけです。
若いうちはもっと羽を伸ばして、自由に楽しまなくちゃ!」
「時間とともに、若さと恥じらいは消えていくものなのよ。
何故か、夢まで壊れるわ。
清純だったのに、30歳が近づくとなんでこうなるんでしょう・・・・
不思議だと思わない。ねぇ貞園。
あら、どうしたの。知り合いでも見つけたの?」
「しぃ~。どこかで見かけた女だと思ったら、やはりあの時のピンボケ女だ。
ということは隣にいる背中姿は、ひょっとしたら康平かしら。
意外です、こんなところで。
いったいどうなっているのから、あの二人の関係は?」
「知り合いなの、貞園?
顔を出さなくてもいいの?。挨拶に行かなくても。」
「声をかけられないような、微妙な空気が漂っています。
知り合いだけど、どうやら訳ありの様子です。
いまは静観しましょう。
あんたたちも、お願いだから、知らんぷりしてちょうだい」
「どの子?
デニムの上下で、髪を短かくしている清楚な感じの女性かしら。
私たちと同じような年代みたいですねぇ。
ということは背中を向けているあの男性も、知り合いなの?」
「男性の方は、とっても古い知り合いです。
日本へやってきて、最初にできた私のお友達。
なるほど・・・私の目を盗んで、そういうことか。
美和子の妊娠を聞いたときも、それほど動揺しないはずだ。
いつのまにか、こういう関係が成立していたんだ。
とはいえ康平は独身。
別にこれといった問題があるわけじゃない。
でも、なんだか複雑な気分だな。裏切られたような気もする。
こうやって初めて正面から見るけれど、敵もなかなか趣味の良い女だ。
思いもよらないところで、私の強敵が登場してきたぞ。
今日はなにやら、荒れ模様の1日になりそうな雰囲気になってきた。
さてこの先で、いったい何がはじまることやら。うふっ」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第81話~85話 作家名:落合順平