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レイドリフト・ドラゴンメイド 第13話 キズナ砲弾

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ワイバーンは続いて、カーリタースを軽々と頭上に持ち上げた。
 カーリタースは、しっかりと帽子を両手で押さえている。
 そう確認すると、猛然と外に放り投げた!
 2人のサイボーグと人工知能が、放り出された人を追う。
 リズムのよい機械音が重なり、ジェットエンジンから力強い流れが噴きだす!
 そこは谷に面した道路側。
 道路を飛び越えれば、険しい山肌に張り付く森。
 翼をいっぱいに広げる。
 重力を加速に変え、杉の先端をかすめて下りていく。

 そのすぐ下では、青いバリアに守られたカーリタースが、ゴロゴロと転がる。
 この世界を作った科学者は、管理者権限によって、攻撃や遠心力など、ありとあらゆる衝撃から守られる。
 ただし、この量子世界が無事な間だけだが。

 4人が飛び出した直後、砲撃が防空要塞の分厚い装甲に次々に当たり、真二つに吹き飛ばした。
 砲撃は4人を追って、と言うより要塞のまわり全体を吹き飛ばし、火の海に変えていく。
 要塞の下を走る道は100メートルほど進むと、山脈の向こう側へとつながるトンネルに入る。
 生徒会が正午過ぎに通ったのと同じトンネルだ。
 今は、現実世界と量子世界をつなぐ入口になっている。
 いまは爆炎で何も見えない。

 最寄りの砲撃は、2人の進行方向から襲ってきた。
 道路から山に向けて、高々と大砲を上げた砲塔がある。
 フリソス戦車と同じ車体を使った、より大きく、遠くへ砲撃する兵器、アツァリ自走砲。それも4台。
 ワイバーンが両手を進行方向へ突きだした。リモートハック。
 両腕を左右へ広げると、車列の中央2台は左右へひっくり返り、砲塔も引っこ抜けた。
 直後、カーリタースにも、リモートハック。
 空中で軌道を変え、引っ張り上げ、脇の下に手を通して持ち上げる
 前方には、谷が徐々にすぼまりながら、待っている。

 巻き添えにされたアツァリ自走砲の生き残りが、まだ動いている。
 ドラゴンメイドは、そのうち一台に飛び降り、砲塔の上で重機関銃を操作していた人形兵士を引っこ抜いた。
「たのんだよ、編美ちゃん」
 抱えていたピンクのランナフォン。
 それを放り込もうとした時、砲塔内部の人形兵士がピストルを突きつけた。
 思ったより細かい動きだがドラゴンメイドは、その銃撃を余裕でよけたのち、ランナフォンをハッチに放りこむ。
 たちまち、自走砲にピンクの光が走った。
「あと1台! 」
 残った一台を同じ目に合わせると、ワイバーンの後を追った。

 残されたアツァリ自走砲へ、6輪駆動するリトス兵員輸送車が向かってきた。
 砲塔には30ミリ機関砲がついている。
 周りには10人の歩兵が。
 うち二人は、肩撃ち式のロケット砲を持つ。

 オウルロードは、すでに自走砲を支配していた。
 主砲を迫りくる敵へ向け、2門同時に火を放った。
 砲弾の衝撃波は路面を割り、木々を揺さぶり、雪を巻き上げる。
 次の瞬間、近づいていた歩兵と軽装甲の輸送車は、跡形もなく吹き飛んだ。

 2人のレイドリフトは、じりじりとせまる谷の中で10メートルまで合流した。
 猛スピードで岩肌や木々が迫る。
 こんな狭い谷では、突風が吹きこめば複雑な流れとなり、軌道を簡単に狂わせる。
 カーリタースは、そのための保険だった。
 彼を先頭にしている限り、風はどこまでも穏やかで、木々は勝手に曲がってよけていく。
 それでも、軌道を上げて敵から丸見えになるのも嫌だった。

 サイボーグの視界には戦場の様子が電子の地図に上書きされている。
 望めば各ランナフォンの撮影した映像を見ることもできる。
 音声通信も自由自在だ。
「予想外です。量子兵器からメインプログラムへのルート切断がはやいです」
 オウルロードのあわてた声。
「ですが、量子兵器はこれでも利用価値がありますね。
 これからは、これを作戦のメイン戦力に据えます」

 視界に新たな映像が送られてきた。
 要塞横の、量子世界と現実世界をつなぐトンネル。
 それを内側から見た映像だ。
 その視界は爆炎で覆われていたが、ピンクの衝撃とともに吹き飛んだ。
 瓦礫だけではない。土埃も、通行や視界を妨げる物はすべて。
 火山の噴火口のようにボロボロになったトンネルが現れた。
 そこから、色とりどりの装甲車とロボットの一団が飛びだす。
 先頭を行くのは、ピンク色の装甲車だ。
 それに続くのは、メイトライ5とPP社。
 味方の増援だ。

 その増援に、砲撃が撃ち込まれた。
 信じられないことに、あの爆撃でも生き延びた敵はいた!
 山に逃れたか、運よく直撃を免れたか。
 とにかく、分母が多ければ分子も多い、という事だろう。

 しかし、敵の機甲部隊は何もできないままひっくり返っていった。リモートハックだ。
 ピンクの装甲車のうえには、リモートコントロールが可能な40ミリ自動グレネードランチャー。
 砲弾は、円筒形のショック吸収形態のランナフォンを、専用ケースに包んだ物。
 道路を駆け上がる、身動きの取れない機甲部隊には、発射されたランナフォンが真上でパラシュートを開き、襲いかかった。

 ドラゴンメイドとワイバーンは、その装甲車を知っていた。
 キッスフレッシュ。
 名前の由来はキュッキュンバー・ホースフレッシュ。お盆に飾られる、きゅうりのウマである。
 オーバオックスから人型への変形機能をはずし、手足の構造を4本足に転化することで、走破能力の高い車両として作られた。
 ウォータージェットエンジンもついているため、水上でも走ることができる。
 乗員は一人。輸送できる人数は十人。
 だが、このピンクの車両は、人工知能による操作が可能だった。
 すなわち。
「わたしの専用車両です」
 オウルロード。ひいてはランナフォン専用車。

 ランナフォン専用車にひっくり返された、道路の外にいた機甲部隊。
 彼らは、そのまま後方部隊の目隠しになる。
 一般に戦車の装甲でうすいところは、上と後方、そして、底。
 丸見えになった底から、砲弾がおさめられている砲塔後ろへ、一直線にレールガンの連射が撃ち込まれた。
 松瀬 信吾マネージャーが駈る、オレンジで飾らせた全高2.6メートルの人型ロボット、オーバオックスの一撃。
 貫かれた砲弾は、次に入り込んだIRSのレーザーの熱で燃え上がった。砲塔を吹き飛ばし、その先にいたフリソス戦車に衝突した。

 それに続くのは、ミカエル・マーティンの赤いオーバオックス。
 山肌から駆け降りる人形歩兵に、大きな丸い物を投げた。
 丸い物が雪腹に着地すると、大きな鉄のばねがはじけ、大きく広がった。
 そのばねには、鋭いカミソリのような歯が無数についている。
 小さな歩兵をいちいちリモートハックするわけにはいかない。
 有刺鉄線で十分だ。
 
 トンネルからは、さらに多くのPP社が飛び出してくる。
 先鋒は3台のマークスレイ。
 シェットエンジンによるホバー走行で、雪原でも自在に高速で動き回る。
 リモートコントロールできる砲塔の25×40mm低速グレネード砲塔から放たれるのは、対装甲兵器用の炸裂弾。
 砲塔にM2キャリバー.50重機関銃を搭載した車両もある。